ロシア・ウクライナ戦争が世界に刻みつけた教訓 過去の常識が通用しなくなり秩序の再構築が必要

✎ 1〜 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

今日の国際社会では、大国間の権力政治による安定の実現という選択肢を選ぶことができない。ウクライナが、中小国の利益の重要性を主張し続け、特にクリミア半島の奪回を反撃の目標と規定する理由も、それを狙ったものであろう。

ウクライナ戦争が戦略面で残した教訓として、国際法上の正当性があり、国際世論の支持が獲得できれば(国際的な認知戦に勝利できれば)、中小国でも大国に一定程度対抗できるということである。この場合、国際的な支持とは、軍事的な支援を意味する。

もちろん、核の拡大抑止を含め、ウクライナは欲しているすべての兵器や政治的関与の支援を得たわけではない。しかし、NATO諸国、特に米英は、戦争の各局面に応じ、ウクライナ軍が領土内でロシア軍を撃退するのに必要な兵器を提供している。

ウクライナ戦争の戦われ方の意味するもの

ウクライナのロシアへの反撃では、多様な兵器が必要となる。たとえば、キーウへのロシア軍の突入占領を阻止するために必要な兵器と、ウクライナ東部および南部の支配をめぐる戦いで使用される兵器、あるいはロシアの支配地域に対して遠距離からの砲撃等で使用されるものや、原子力発電所などの拠点を奪回するために必要な兵器や部隊等は異なる。

ただ、今回の戦争では、ウクライナがロシアに対抗できるだけの戦力を用意できたことが、最大の驚きといってよい。

この事実は、21世紀の戦争のあり方に、大きな示唆を残すものである。

第1に、継戦能力の有無と、その柔軟な運用が、結果を左右する影響があるということである。この問題は、戦争を「ストック」で戦うのか、それとも「フロー」を重視するのかという、軍事学における重大な論点とも関係する。

戦時において、自国生産や輸入を含め、必要な兵器を継続的に入手できる能力は、極めて重要な意義を持つ。戦争が長期化すると、兵器の「ストック」はいつか尽きる。さらに、戦争の局面に応じて、兵器のアップグレードや新兵器の投入が必要となる。

つまり、それを可能とする産業基盤や技術基盤の存在が不可欠となる。もしそれを保有していないのであれば、輸入でそれらを確保する状況を作っていることが重要になる。ウクライナはこれを効果的に実現できた。

次ページ戦争を管理されるリスク
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事