今後も米国株の「戻り」は限定的になると見るワケ 楽観的な「利下げ観測」はこれからもつぶされる

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他方、「家賃」は現在も上昇基調を強めている。住宅ローン金利の急上昇を受けて、最近は住宅販売・着工が顕著に落ち込んでいることから、やや長い目で見れば沈静化に向かうと判断される。だが、パンデミック特有の事情、すなわち突発的な住宅需要の発生によって先行きは読みにくくなっている。

通常なら金融引き締めに伴う住宅ローン金利の上昇によって住宅市場が冷え込むことで、帰属家賃(持ち家の価値を家賃相当額に換算したもの)と貸家賃料の双方に下落圧力が生じるはずだが、この局面においては中古住宅の著しい不足によって住宅取得を諦めた人々が賃貸住宅に集中しており、そのしわ寄せで貸家賃料が押し上げられるという特異な現象が発生しており、全体として家賃は上昇基調を強めている。2023年には住宅市場全般の冷え込みを映して家賃インフレは鈍化していくと予想されるが、少なくとも年内は高止まりが予想される。

賃金の過度な急上昇とインフレ増幅の悪循環とは?

そして最も厄介なのが「賃金」の過度な上昇に起因するインフレ圧力である。通常のマクロ環境において賃金上昇は好ましい現象だが、現在のアメリカで観察されている極端な賃金上昇は、それ自体がインフレを増幅してしまうため問題であり、それはFedも同様の見解とみられる。

同国の7月雇用統計によると、平均時給は前年比でプラス5.2%と依然高止まりしている。この背景にあるのは労働参加率(16歳以上人口に占める働く意思のある人の割合)の低下、とりわけ55歳以上の人々である。55歳以上の労働参加率は2019年12月時点で40.3%であったが、2021年3月に38.2%まで落ち込み、その後2022年2月には39.1%まで回復したものの、3月は38.7%と改善が一服し、パンデミック発生前後で大きな断層が生じている。

2020年に解雇・レイオフされた人々は、当初コロナが落ち着き、給付金や失業手当の給付が終われば復職すると予想されていた。だが、少なくとも現時点では労働市場の外にいる状態である。このまま労働需給が過度に逼迫した状態が続けば、賃金インフレは収まらない。このことは金融引き締めがすぐに終わらないことを意味するため、株式市場にとって逆風である。

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