創薬の「そーせい」、大型買収の狙いとは?

パイプライン多く中長期の成長力を強化

GPCRは近年までその働きがよくわかっていない部分も多く、12年にはこの研究を行ったレフコヴィッツ博士とコビルカ博士がノーベル化学賞に選ばれたほど。承認済み医薬品の40%がGPCRに作用するとされるものの、薬のターゲットになり得る370種類のうち150種類は未解明で、新たな創薬ターゲットとして期待されている。ところが、GPCRの一部は、物質として不安定で創薬ターゲットにするどころか解析すら困難だった。

その不安定さを解消し、解析できるようにしたのだ。ヘプタレスの持つ医薬品候補物質のうち6つはファースト・イン・クラス(画期的医薬品)か、ベスト・イン・クラス(既存薬に対し明確な優位性のある医薬品)になりうるという。

開発初期段階が多くリスクも

一方、この大投資にリスクがないわけではない。ヘプタレスの持つ医薬品候補物質は、開発初期段階のものが多い。創薬の世界では、基礎研究段階から新薬が生まれるのは1万分の1とも言われる。自社開発の中で最も進んでいるのがアルツハマー病をターゲットとする物質の臨床第1相で、次いで治験許可が下りたのが注意欠如・多動性障害の治療薬。その他、統合失調、偏頭痛、糖尿病など前臨床があり、基礎研究段階のものもある。

共同開発案件は詳細が非開示となっているが、自社開発と合わせて近々臨床試験入りするものが6本ほど。16年には1、2相の結果が出るものもあるといい、「この中から1つか2つ成功すればいい」と田村社長はいう。

買収価格480億円のうち200億円弱は即金で支払い、残額はヘプタレス社のパイプラインからライセンス契約による一時金やマイルストーンなどが上がった時点で相当額を元の株主に支払う。「頭金」の200億円はみずほ銀行から無担保融資を受けるが、返済期限は7か月後の9月末。

典型的なつなぎ融資に見えるが、つなぐ先の出資予定者は現時点では決まっていない。返済資金は、株式の希薄化を招かないような方法で、長期借入も含めてこれから考えるという。ただ、時期も金額も不確定な医薬品候補物質の提携やライセンスアウトは考慮に入れていない。

「POC(Proof of Concept)を取った(有効性を確認した)段階で、付加価値をつけてライセンスアウトしていく」(田村社長)。

うまくいけば19年には、慢性閉塞性肺疾患治療薬の米国での売り上げ本格化に加えて新規候補物質のマイルストーンなどで売上高が3倍になる目算だ。とはいえ、ただでさえ読みにくい医薬品の開発スケジュールだけに、思惑通りに動くかどうか、やってみなければ分からない面がある。まずは9月末までの資金調達という関門をどうくぐり抜けるか。買収後の最初の試練になる。

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