「相鉄・東急直通線」、地元にもたらす利点と難点 新横浜の南口で再開発?日吉始発なくなる?
その理由は、パナソニックの工場跡地などを利用して2018年にオープンした官民一体の共同プロジェクト「綱島サスティナブル・スマートタウン」にアップル社が技術開発施設を開設したから。「日本における技術開発施設としてアップル社が綱島を選んだのは何か理由があるはず」と池谷氏。ST線開業を契機に綱島がアップルユーザーの聖地として注目を集めるかもしれない。
羽沢駅周辺地域まちづくり連絡会の会長を務める和田勝己さんは、「横浜駅から車で十数分しか離れていないのに、羽沢横浜国大駅の周辺には何もない。羽沢はかつては“横浜のチベット”と揶揄されてきた」と話す。それだけにST線開業にかける地域住民の熱意は相当なものだという。
その一例が、市が今年5月に発表した「羽沢横浜国大駅周辺地区バリアフリー基本構想」である。「これまで横浜市では30件ほどのバリアフリー構想の提案がなされてきたが、すべて行政主導だった。今回のような住民提案は本件が初めて。全国的に見ても非常にまれなケースではないか」(和田さん)。農・住・学を融合したまちづくりを行い、より便利で住みやすい羽沢にしたいと意気込む。
日吉と三田直結、慶応大の考えは?
新横浜地区では、F・マリノススポーツクラブの牧野内隆氏が説明を行った。ホームタウン担当として、「チームをまちづくりのアイテムとして活用してほしい。日本で最もスポーツが溶け込んだ街にしたい」と話したが、一方で、ST線によって新横浜と東京の行き来が便利になることで、「FC東京のようなアウェイのサポーターにもプラスになる」と喜ぶ。
慶應義塾大学商学部の牛島利明教授は、約1万5000人の日吉キャンパスおよび隣接する矢上キャンパスの学生は「これまでは地域にとっては消費者でしかなかった」として、ST線開業を契機に「学生と地域が主体的にかかわり、それをキャンパスに持ち帰って議論できたらいい」と期待する。
また、下宿して日吉キャンパスに通う学生は日吉、元住吉、綱島などのキャンパス周辺に住んでいても、3〜4年次になると三田キャンパス周辺に引っ越すという例が多かったという。しかし今後は、「今までは2年しか住んでなかった学生が、三田にも直通することで、4年間この地にとどまる学生も出てくるだろう。2年と4年では地域との付き合いも変わってくる」。牛島教授が期待するように、学生による地域への主体的な関わりが増えるかもしれない。
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