「相鉄・東急直通線」、地元にもたらす利点と難点 新横浜の南口で再開発?日吉始発なくなる?

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横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院の高見沢実教授は、「実は日吉キャンパスに入ったのは今日が初めて」と笑う。ST線開業で「私たちのキャンパスにもいろいろなお客様が訪れてくれるのではないかと非常にわくわくしている」。高見沢教授は、ST線の次の鉄道計画をいくつか説明したが、その中には相鉄いずみ野線を湘南台から8km延伸しJR相模線の倉見駅までつなげる構想がある。倉見駅の近くには慶大のSFC(湘南藤沢キャンパス)があり、ここに途中駅を設ける。さらに倉見駅に東海道新幹線の新駅を設置するという構想もある。実現すれば日吉、新横浜、羽沢横浜国大、SFC、新しい新幹線駅が線路でつながるが、「いずみ野線延伸は交通政策審議会の答申に”事業性に課題がある”と書かれている。ただ座ってのんびりしていればできるというわけではない」と、高見沢教授は指摘した。

鉄道会社からは、東急プロジェクト開発事業部の関口哲也・開発第2グループ統括部長が新横浜駅の南口(篠原口)の再開発について言及した。新横浜駅は北口には高層ビルが建ち並ぶが、反対側の南口の駅前にあるのは駐輪場や駐車場。すべての新幹線が停車する都会の駅とはとても思えない。しかし地権者の間で再開発の方向性がようやくまとまり、2019年には東急と日鉄興和不動産が事業協力者に選ばれた。「まちづくりの方向性やスケジュールなど具体的なことは何も決まっていない」と関口氏は口を濁すが、こうして沿線地域の人たちを前に話をすれば否応にも期待は膨らむ。

「座れなくなる」懸念も

相鉄アーバンクリエイツの齋賀幸治事業推進部長は、相鉄沿線の魅力についてPRした。「相鉄沿線は自然が多く、横浜にも近い」。相鉄の沿線人口はすでに減少に転じているが、ST線によって都心と直通することや新幹線アクセスが便利になることを武器に沿線への移住者を増やす構えだ。

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このように沿線各所でST線開業後への期待が膨らむが、メリットばかりではない。とくに日吉では、日吉駅の始発列車が大幅に削減されることが予想され、東海道新幹線へのアクセスが便利になるメリットよりも「座って通勤できなくなる」というデメリットを強調する声もあるという。

日吉在住の渡辺氏は「僕ら自身が主体性を持って何がメリットかを考えていく必要がある」と言う。鉄道路線ができれば自動的に街が発展するというものでもない。街の主役は鉄道路線ではない。あくまでそこに住む人たちなのである。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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