経済財政諮問会議の「ゆるい議論」を許すな 「成長の夢」追い、歳出削減の文字見当たらず

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財政健全化のために必要な歳出改革において、「削減」なき歳出改革は絶対にありえない。確かに、必要な財政収支改善幅を数値として「経済再生(成長による税収増)、歳出改革等により(各年一律ではなく)年平均0.5%程度の改善」と言及しており、一応、これが報道では「歳出削減」を含んでいると認識されてはいる。しかし、そもそもの民間議員ペーパーでは「削減」という文字を避けに避けている。

「名目年3.5%成長でも、2020年度9.4兆円赤字」の現実

「削減」なき歳出改革では、2020年度の基礎的財政収支黒字化は実現不可能だ。実現できないことを恐れてか、2020年度の財政健全化目標を、基礎的財政収支黒字化ではなく別の目標にすり替えようとする「悪だくみ」があることは、東洋経済オンラインの拙稿「安倍政権、このままでは『ねずみ講財政』」だ」にて示した通りである。幸い、甘利明・経済財政担当大臣も、2月12日の会合後の記者会見で、基礎的財政収支の黒字化は2020年度に達成すると明言している。

同じ2月12日の会合では、内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」の改訂版も示された。これによると、2010年代後半の名目成長率が3.5%前後で推移すると想定した場合(経済再生ケース)、経済成長による税収増を織り込んでも、2020年度における国と地方を合わせた基礎的財政収支は約9.4兆円の赤字になるという。

この収支の黒字化が目標なのだが、残り9.4兆円の赤字を解消するには、歳出削減か増税などによる財源確保によって赤字を埋めるしかない。消費者物価上昇率が2%で推移することを前提に、3.5%を超える名目成長率を実現することは今の日本では望みえない。だから、9.4兆円の赤字解消の中に、さらなる経済成長による税収増は含められないとみるべきである。

ところが、こうした厳しい状況にあることを、経済財政諮問会議は直視したくないようである。何とかして、厳しい歳出削減も避け、経済成長を促すことで基礎的財政収支を改善できる策はないかとあがいているように見える。

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