ムーヴ キャンバスが「軽の革命児」となる理由 “広すぎない"スライドドアに高まるニーズ

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ライバルメーカーであるスズキがそれを見逃すはずはないが、スズキは長らくこの市場を静観。2021年8月にワゴンRスマイルを投入し、ようやく参入する。そして、2022年7月13日にムーヴ キャンバスがフルモデルチェンジ。ワゴンRスマイルと本格的に、火花を散らすこととなる。

2世代目となったムーヴ キャンバスは、ムーヴをベースにスライドドアを備えるパッケージングはそのままに、可愛らしい従来路線のデザイン(新型では「ストライプス」と命名)だけでなく、よりスッキリとした万人受けするデザインの「セオリー」グレードを追加。

ムーヴ キャンバス・セオリー
モノトーンボディカラーとシックなインテリア仕様の「セオリー」(写真:ダイハツ工業)

さらに、新世代のDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)プラットフォームと、初代にはなかったターボエンジンを採用している。

メディア向けの試乗会で新型ムーヴ キャンバスに乗ってみたところ、「とても運転しやすいクルマ」という印象を持った。乗り心地がよく、直進性がいいのだ。また、パンチ力があるとは言えないが、NA(自然吸気)エンジンモデルでも、高速道路では過不足ないパワー感を得られた。

プラットフォームの進化が、しっかりと走りに反映できているのだろう。基本のコンセプトをキープしつつも、プレーンなデザインのグレードを用意することで間口を拡大。その一方で、「走る/曲がる/止まる」というクルマの基本部分を底上げしている。先代の良さを伸ばす、手堅いフルモデルチェンジと言えそうだ。

「打倒、N-BOX」ではなくとも

この試乗会では、開発者の話を聞くこともできた。そこで、製品企画担当者に「打倒、N-BOXの気持ちはあるのか」と尋ねてみた。

すると、「N-BOXのことは考えていません。そうではなく、ムーヴ キャンバスのこれまでのユーザーを見ています。従来型ユーザーに“これは違う”と思われないように気を使いました」と答える。

初代ムーヴ キャンバス
従来型(初代)ムーヴ キャンバス(写真:ダイハツ工業)

あくまでもムーヴ キャンバスは、ハイトワゴンの王道をゆくムーヴの派生モデルであり、ニッチを狙っているというわけだ。また、「ダイハツのほかの車種のお客様を奪うつもりはありません」とも言う。

たしかに、新しくなったムーヴ キャンバスの基本デザインは、先代同様に丸みを帯びていて可愛らしい。プレーンな外観のセオリーでもヘッドライトのデザインは目のようで、ストライプスほどではないが、“可愛い寄り”の雰囲気を持つ。筆者のようなおじさんが愛車にするには、少々不釣り合いかもしれない。

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