ムーヴ キャンバスが「軽の革命児」となる理由 “広すぎない"スライドドアに高まるニーズ

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とはいえ、売れているのは事実だ。軽自動車の販売ランキング(全国軽自動車協会連合会調べ)を見ると、ムーヴ キャンバスを含むムーヴの7月の成績は2位。新型ムーヴ キャンバスの発売前である6月の3位から順位を1つ上げている。

上にいるのは、王者N-BOXだ。春頃のランキングでは、N-BOXをはじめルークス、スペーシア、タントといったスーパーハイトワゴンが上位を占めていたが、そこにムーヴが割って入ってきた格好だ。

ホンダ「N-BOX」カスタム
軽自動車の王者、ホンダ「N-BOX」(写真:本田技研工業)

ちなみに、自動車マーケットはおもしろいもので、新型車が登場するとそのライバル車種の売れ行きも伸びるのが通例。新型ムーヴ キャンバスの発売でもその現象は見られ、ワゴンRスマイルを含むワゴンRの順位も、7月はタントやルークスを上回る4位に上がっている。

つまり、“スーパーハイトワゴンの上位独占”が壊れかけているのだ。

ムーヴ キャンバスの製品企画担当者も「スーパーハイトワゴンの次にくるトレンドに、ムーヴ キャンバスのような、“それほど背の高くないスライドドア車”の可能性は高い」と話している。

使い切れない広さはいらない

スーパーハイトワゴンに乗ってみれば、室内の広さ感は圧倒的だ。しかし、「そこまで高くなくてもよいのでは」という思いもぬぐえない。天井の高さを有効活用できるのは、大きな荷物を積んだり子どもが室内で着替えたりといったシーンに限られるからだ。

一方、少し全高を下げたムーヴ キャンバスは、走行性能という点で確実にスーパーハイトワゴンの上をゆく。重心が低く横風の影響も受けづらいため、走りの安定性が高いのだ。

「ムーヴ キャンバス」のボディサイズ/室内寸法
室内高は背の低いセダンやコンパクトカーより100mmほど高い(写真:ダイハツ工業)

“少し全高を下げた”とはいえ、セダンより200mm程度も背が高いため、室内が狭く感じることもない。室内の広さを最優先するのではなく、走りと室内空間のバランスを考えれば、ムーヴ キャンバスの寸法がベターであると思う。

そういう意味で、ニッチを狙うムーヴ キャンバスではなく、もっと大きなターゲットを狙った、“スライドドアのムーヴ”のようなクルマが登場すれば、軽自動車の勢力図は大きく変わるのではないだろうか。新型ムーヴ キャンバスの販売動向には多いに注目したい。

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鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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