そうだったのか!「イギリスと中国」決定的な違い 世界の国はだいたい2つの統治方に分かれる

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世界統合型と勢力均衡型、それぞれの統治の特徴とは?(写真:Bloomberg)
ロシアによるウクライナ侵攻や、アメリカと中国の関係緊迫化など、今も世界のあらゆるところで国や地域間のせめぎ合いが行われているが、これまでの世界史では国による統治は、「世界統合型」の統治と、「勢力均衡型」の統治に二分されていることに気づく。本稿では物理学者である長沼伸一郎氏著『世界史の構造的理解』より、世界統合型と勢力均衡型の特徴を、説明する。

ローマ世界とギリシャ世界の「違い」

古くから「世界を根本的にどういうシステムで運営するか」の選択の問題として、「世界統合か、勢力均衡か」という問題が存在していた。そして、それを理解するための最初の入り口としては、むしろ時代をもっと古代までさかのぼって、ローマ世界とギリシャ世界を比べることから入っていくのがもっともわかりやすいと思われる。

この場合、「ローマ世界」というのは早い話、ローマが地中海世界を制覇して、ローマ帝国という単一の帝国に統合した世界である。それに対して「ギリシャ世界」というのは、多数の都市国家が対等な立場で並立する世界である。

後世のナポレオンは、ヨーロッパ全体をフランスの三色旗の下に統合するという、「世界統合型」のビジョンで動いていたのに対し、イギリスはむしろ大陸内部に単一の覇権国家が生まれることを阻止して、複数の国家がバランスをとりながら並立する「勢力均衡型」の世界を志向していた。

要するに、ナポレオンはローマ世界のような「世界統合型」を、イギリスはギリシャ世界のような「勢力均衡型」をそれぞれ目標としていたわけで、ナポレオン戦争はまさにこの2つの理念が激突する戦争だったのである。そして結果的にイギリスが勝つことで、ヨーロッパ世界のその後は、以前からの勢力均衡型の世界が守られてそのまま続くことになったわけである。

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