政府や自治体の少子化対策に関しては、長年「子育て支援の充実」ばかりに目がいき、本来の「婚姻数が減れば出生は減る」という根本問題には触れられてきませんでした。
もちろん、「子育て支援」そのものを否定するものではないですが、「子育て支援を充実させれば少子化は解決する」という論理は的外れであることは今までの少子化対策が証明しています。そもそも子育て支援は少子化があろうとなかろうとやるべきものでもあります。
しかし、さすがに問題の本質を無視し続けることはできないようになったのか、最近の白書や政府の提言の中に、「少子化対策としての婚姻支援」という文言が最初に語られるようになりました。課題の抽出としてそれは間違ってはいないと思います。
”晩婚化”は起きていない
よくいわれるのが、「未婚化ではなく晩婚化だ」というものです。確かに平均初婚年齢の推移をみれば、皆婚時代だった1980年には夫27.8歳、妻25.2歳だったのに対して、2020年には夫31.0歳、妻29.4歳となっており、晩婚化しているといえます。
しかし、正確には「晩婚化など起きていない」のです。
晩婚化としてしまうと「初婚の年齢が後ろ倒しになったので、いずれ結婚はするだろう」という安易な誤解を招きます。そうした間違いのもとになっているものが、政府もメディアも揃って喧伝している「結婚したいが9割」という嘘にあります。
過去記事(参考:「独身の9割が結婚したい」説の根本的な誤解)で詳しく解説しているのでここでは結論だけ述べますが、1980年代から「結婚に前向きな若者は5割程度しかいない」というのが事実です。
「結婚したいが9割」を金科玉条のごとく唱える人は、「結婚意欲はあるのだから、何らかの結婚支援策を講じれば婚姻数はあがるはず」と前提を取り違えた間違った論法に陥ります。そんなことで婚姻数はあがりません。
それどころか、「意欲はあるのに結婚できないのはおかしい。これは本人の努力が足りないからだ。草食化したのではないか」などという筋違いな方向に結論づけられたりするわけです。
皆婚時代も現代も恋人がいる割合は大体3割で変わらない「恋愛強者3割の法則」があります(参考:最近の若者は「恋愛離れ・草食化」という大誤解)。では、なぜ、恋愛している若者は3割しかいないのに1980年代まで皆婚できたのか、という問いに対しては「結婚の社会的お膳立てシステムがあったから」に他なりません。
もっとも婚姻数が多かった1972年と2015年とを比較した場合、46万組の減少ですが、これはお見合いと職場結婚というお膳立てシステムによる結婚数を合算した減少分と完全に一致します。つまり婚姻数の減少はこれら2つのお膳立ての減少分だったと言えるのです(参考:100年前の日本人が「全員結婚」できた理由)。
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