「製作費120億円映画」お蔵入りの独善に業界憤然 製作者への裏切りはハリウッドの負の遺産に

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この大胆な決断をしたのは、ディスカバリーとの合併でワーナー・ブラザース・ディスカバリーとなった新会社のCEOに就任したデビッド・ザスラフ。彼は30億ドルのコスト削減を目標にしていることから、業界では当初、「税金対策ではないか」「負の資産を持ち込みたくないのではないか」などとの憶測が聞かれた。だが、そのどちらも正しくはない。

さらに、彼は、前任者ジェイソン・カイラーのやり方が気に入らず、それを全部ひっくり返したいのではないかとの声も出た。AT&T傘下にあった時にトップを務めていたカイラーは、HBO Maxに力を入れていたことで知られる人。パンデミックで欧米の映画館の多くが閉まっていた2020年末には、2021年公開作品をすべて劇場公開と同時にHBO Maxで配信すると発表し、これはこれで業界に衝撃を与えていた。

『バットガール』も、カイラーの時代にHBO Maxで配信する目的でゴーサインが出たが、途中で劇場公開に切り替わったものだ。ザスラフは、『バットガール』と同時に製作中のアニメーション映画『Scoob! Holiday Haunt』もキャンセルしているのだが、こちらもHBO Max用だった。『Scoob!〜』には4000万ドルほどの製作費が投じられていたという。

ザスラフ本人が理由を明かした

アメリカ時間8月4日に開催された第2四半期の報告会議でザスラフが述べたことによれば、どうやらこの最後の推測は、大筋で当たっているようだ。彼は、配信作品のために大金を投じるのはばからしいという考えの持ち主らしく、「お金をかけた映画がストリーミングに行くことに経済的な価値はまるでない」「劇場で公開するのとは比較にならない」と語っているのである。

また、そうやってお金をかけた映画は、ライバルのマーベルがやっているように、長い視野のもと、しっかりと戦略を立てて製作されるべきだとも、彼は考える。DCスーパーヒーローはワーナーにとって大切なお宝だと認めるだけに、「我々は、DCが長期間成長していけるようにする。用意ができるまで、映画を公開することはしない」と、ザスラフは宣言した。そのプランができていない段階で公開されようとしていた『バットガール』は、そこにぴったりはまってしまったらしい。

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