1戸300万円不足のマンションも「修繕費」の闇 資金不足を背景に修繕を後回しにする動きも

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実際に、入居者のうち高齢者が7割近くを占める都心の某マンションでは、給排水管の工事を適切に行ってこなかったために、水道から錆で濁った赤い水が出るようになった。そのため調理や飲み水としては、水道水が使えない事態が発生しているという。

「いくら便利な場所で立地条件が良くても、建物や設備のメンテナンスをきちんとしていないと、いざというときに売ることも貸すことも難しい資産価値の低い物件になってしまう」(土屋さん)

週刊朝日 2022年7月29日号より

工事回数増えるごとに費用増加

建物や設備の経年劣化が進むごとに修繕の工事費用が高くなるのは、マンションにおける大規模修繕工事もしかり。大規模修繕工事は回数が増えるほどに工事項目が増え、金額も増える傾向にある。1回目の修繕工事では全体的に補修程度で済む箇所が多いが、2回目の工事では、さらなる経年によって増えた劣化箇所の補修とともに、必要な工事が上乗せされる。

マンション問題について詳しい米山秀隆さん(大阪経済法科大学教授)は言う。

「3回目の大規模修繕工事に足踏みする、築40年前後のマンションは少なくありません。初期に供給されたマンションは、そもそも管理という認識が乏しく、管理組合そのものがないことも珍しくはなかったのです」

ここでマンションの歴史を少し振り返りたい。日本で初めて分譲マンションが登場したのは、1950年代のこと。その後、高度経済成長期を経て、国の住宅政策の後押しも受け、全国的に広まった。しかし、70年代に建てられたマンションはすでに築40年を経過し、80年代に建てられたものも築30年超。90年代、2000年代にはマンションの新規供給戸数が80年代の1.5~2倍へと増えていることから、今後20年の間でマンションの老朽化が加速度的に進むと言われる。

築30~50年超の分譲マンション戸数の推移を国交省が試算している。調査によれば、20年末時点における分譲マンション約675万戸のうち、築30年以上のマンションは全体の約34%の232万戸、築40年以上も103万戸にも上っている。これが40年末には築30年以上が578万戸、築40年以上が現在の4倍に当たる405万戸になると試算されているのだ。

築年数が経過すれば当然、建物や設備は老朽化し、時代とともに進化していく住宅水準との差が広がる。古びたマンションは適切にメンテナンスしないと魅力がなくなり、空室率が増え、管理費や修繕積立金の滞納などの問題も出やすくなる。

こうしたことを防ぐ目的で、マンション管理適正化法が改正され、管理計画認定制度など、自治体がマンション管理に関わる仕組みが今年4月に導入された。個々のマンションの管理を徹底させるために自治体が関わる仕組みを取り入れ、少しずつ運用が始まっている。前出の米山さんは言う。

「制度の改正は、適正に管理されていないマンションが少なくないことの表れでもあります。これから新築するマンションは、認定制度などを前提に、管理体制がより強化される流れになると思います。また既存のマンションにも、管理を見直そうとする動きが出てくるのでは」

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