1戸300万円不足のマンションも「修繕費」の闇 資金不足を背景に修繕を後回しにする動きも

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振り返れば、入居からしばらくの間は、修繕積立金は毎月数千円前後と大した金額ではなかった。長らく据え置き状態で「何とかなるだろう」という長年にわたる楽観的な自主管理体制は、数年前に管理会社に部分委託するようになったことで問題が表面化した。

「何とかなるだろう」から一転、修繕積立金の値上がり

そのころから毎月支払う修繕積立金が大幅に上がり、一部の住民からは値上げ反対の声も出ていたが、「建物を安全な状態に保つには、どうしても必要な費用だから」と当時の理事らが住民を説得した。それでも実際の見積もりと照らし合わせると、全く足りていない状況なのだ。

住民を見渡せば、自身を含めて60歳を超える高齢者が8割近くを占め、年金暮らしに入っている世帯も少なくない。全住戸から300万円を徴収することは、まず不可能だろう。借り入れという手段もあるが、高齢者が多いマンションで多額の借金を背負うことはリスクが高い。住民からは、「これ以上積立金を値上げされると、生活していけない」「大規模修繕は、自分がいなくなってからにしてくれ」という声が上がっている。

こうした中、理事の一人(70代)が脳梗塞を患い、長期入院することになった。入院費もかさむ中、修繕の話題はますます頭の痛い話だろう。このまま自宅に帰ってこられない可能性もあるかもしれない。自分もいつ、そうした状態に陥るかわからない年齢に差しかかっている──。

「日ごろから管理組合を中心に適切に管理や修繕をしていればいいのですが、そうもいかない現実があるのが実態です」

『60歳からのマンション学』などの著書で知られるマンショントレンド評論家の日下部理絵さんは言う。

管理組合は、分譲マンションを購入した区分所有者で構成される組織で、マンションの共用部分は管理組合が維持管理している。維持管理の実務を組合員全員でこなすのは困難なため、理事会が管理組合を代表して維持管理の運営に当たる。理事会を構成するのは、理事長、副理事長などの理事と理事会の活動をチェックする監事。任期は一般的には1~2年で、輪番制や立候補制、くじ引きなどで決められる。

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