パナソニック、4000億円社債の狙いとは? 節約路線から成長投資へのシフト鮮明に

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実はパナソニックは、2011年3月にも総額5000億円の社債を発行し、事業会社として過去最大規模の発行額として、社債市場で注目を集めた経緯がある。当時は三洋電機の買収に伴い、短期の借入金が膨らんだ事情があった。そのうち、すでに1500億円の償還は終えたものの、2016年3月に2000億円、 2018年3月に1500億円の償還が残っており、今回の社債発行には、その借り換えの意味合いもある。

ただ、すでに現預金は8000億円を超え、手元資金での返済も可能ではある。新規の社債発行は、株主資本比率の縮小につながり、これまで一貫していた、財務戦略の方向性と一線を画するはず。それでも、今回発行にこだわったのは、河井CFOが語る「成長投資」に向け、手元資金を確保したい狙いがある。

「2016年3月期は、さまざまなM&Aを時間をかけてやっていく。小さなM&Aであれば、前倒しでやっていく」。津賀一宏社長はこの1月初旬、米国で行われた家電見本市「CES」会場での記者懇談会で、M&Aへの意気込みを語った。さらに「戦略的な投資はこれまで減価償却費の範囲内に収めていた。が、それを上回る額でやっていく」と、投資に前向きな姿勢を強調した。

あくまで自社の信用で市場調達

パナソニックが目下進めるのが、法人向け(BtoB)事業へのシフトだ。BtoBで重要なのは販路、また注力中の車載分野でいえば、製品領域である。両者とも、その拡充にはM&Aの成否がカギを握る。今回の社債発行は、その拡充への準備と言える。

では、なぜ、銀行からの借り入れではなく、社債発行なのか。その疑問に対し、財務・IRグループの担当者は、「銀行からの借り入れでなく、あくまで自社の信用で市場から調達するというのが、わが社にはDNAとして根付いている」と説明した。

異次元の金融緩和の影響で、投資家の購入ニーズも高く、社債の発行環境は目下良好だ。津賀体制下で第一弾の中計達成はクリアした。次は巨額社債の発行をどう成長につなげるのか。問われるのはM&Aの選択眼だ。

(撮影:今井康一)

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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