コロナの英雄vs蒋経国の孫で白熱する台北市長選 2022年11月投票、最有力地盤で国民党は復活なるか
また、台湾重視の姿勢を打ち出した背景には、自身や政権が中国に戻れないことが確実であったことがある。また、軍事的にも経済的にも、そして国際政治の面でもアメリカに強く依存し、中国との戦争を望まないアメリカ政府の意向で、しぶしぶ台湾に根を下ろすことになったからとする意見がある。
他方、蒋経国も父と同様、恋多き男だったと言われている。夫人はファイナ・イパーチエヴナ・ヴァフレヴァ氏(中国語名は蒋方良)だが、他にモスクワ中山大学時代に知り合った実力者である馮玉祥氏の娘・馮弗能氏、元秘書で謎の死を遂げた章亜若氏、京劇界のレジェンド・梅蘭芳氏に師事し、自身も国宝級の役者だった顧正秋氏がいたとされる。
子どもはファイナ氏との間に蒋孝文氏、蒋孝武氏、蒋孝勇氏の3男と蒋孝章氏の1女、それに章氏との間に章孝厳氏(後に蒋姓に改名)、章孝慈氏の2男がいる。近年、蔣介石のイケメンひ孫ともてはやされているのは、蒋孝勇の子である実業家の蒋友柏氏であり、蔣万安氏は蒋孝厳氏の子である。両者は蒋家の血を引いているものの、考え方が異なっており、蒋万安氏の選挙戦にも影響を及ぼすと考えられている。
実務家の現職副市長も参戦
直系の蒋友柏氏は、かつて一族が台湾人を迫害したこと、国民党が共産党と和解する前に、まずはスパイとして逮捕されいわれなき罪で苦しんだ人々やその家族に謝罪すべきこと、また一族は自分の代で政治から足を洗うべきこと、巨大な蒋介石像がある中正紀念堂の存続に反対など、物議を醸す発言をしている。
一方、傍系にあたる蒋万安氏は、蒋友柏氏ほど蒋家の行いについて、明確に反対していない。そのため、クリーンなイメージが先行する蒋万安氏だが、人々の間で煮え切らない態度で決断力や実行力に欠けると映り、選挙戦の弱点になっていると言われている。
蒋万安氏の人気にあやかりたい国民党は、当選をより確実にするため、一部の党員が、一時、黄氏に出馬を辞退するよう迫り、黄氏を推す柯文哲市長や党首を務める民衆党に、蒋万安氏への一本化を要求したとの話が浮上した。黄氏は一蹴したが、選挙戦で惨敗が続く国民党にとって、2022年11月の台北市長選は負けられない一戦だということを、人々に印象付けたのだった。
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