天安門事件被害者が憤る台湾前総統の親中姿勢 民主主義を求める行動に対し批判、中国擁護も

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2016年5月、現在の蔡英文総統(左)の就任式で政権を受け渡した中国国民党の馬英九前総統(中、写真・2016 Bloomberg Finance LP)

2022年6月4日、天安門事件発生から33年目にあたるこの日、台湾の馬英九・前総統が「フェイスブック」で声明を発表した。ところがその内容が、中国の習近平国家主席を称え、民主進歩党(民進党)政権下の現在の台湾を貶すものだったことから、社会で物議を醸している。さらに、事件の被害者も馬氏を非難する事態に陥っているのだ。

馬氏は2008年から2016年まで、台湾の直接選挙で選ばれた中国国民党(国民党)籍の総統として2期8年務めた。在任中の2015年に、中国の習氏と史上初の中台首脳会談を行うなど親中路線を進めた。しかし過度な接近は、2014年の「ひまわり学生運動」などに代表されるような、台湾内でくすぶり続けていた反中世論が一気に噴出する結果をもたらした。今では台湾の親中派政治家の大御所、国民党のご意見番のような存在である。

共産党の統治を評価した馬氏

今回の声明でまず問題とされたのは、中国の現状を全く顧みず習氏を称えた部分である。とくに2021年10月、習氏が中央人民代表大会工作会議で語ったとされる部分を取り上げ、中国共産党(共産党)の統治を評価している点だ。

習氏は、民主主義は人類共通の価値観だけでなく、共産党と国民が堅持する重要な理念と強調している。しかし、民主化の指標ともいえる選挙を、習氏は批判しているのだ。そもそも、民主主義を大切にする政党や政府であれば、天安門事件のような「民主化」を求めた運動は起きなかったはずで、前提からおかしい。ちなみに、共産党は2021年に採択した「歴史決議」でも事件を「動乱」としており、学生らを殺害し弾圧した当時の対応は正しかったという立場を変えていない。

次に問題とされたのは、天安門事件に関する声明であるにもかかわらず、台湾の現政権や与党への非難を大々的に展開している部分である。

台湾が「民主化」を世界や中国にアピールする裏で、現政権による弾圧が行われ「不自由な民主化」に陥っていると指摘した。例えば、(親中路線の)テレビ局のニュースチャンネルの閉鎖や、与党が国民党に「白色テロ」(国民党支配の台湾で、反体制派に行った政治的弾圧)への清算を求める行為がそれだ、という。

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