コロナの英雄vs蒋経国の孫で白熱する台北市長選 2022年11月投票、最有力地盤で国民党は復活なるか
そもそも、台北市長は、陳水扁氏、馬英九氏ら歴代総統も経験しており、次世代の有力総統候補の登竜門と見られている。実際に、柯氏も次の総統選を見据えて民衆党を立ち上げたが、現在は勢いを失っている。
そのような中、柯氏は副市長でもある黄氏を自らの後任とする状況になっている。
黄氏は1998年に中国との統一を志向する新党から台北市議会議員になった。2019年に副市長に就任するまでの21年間、議員を務めたことで、議会や行政運営のすみずみまで熟知していると言われている。コロナ禍でも柯氏の片腕として活躍してきた。全国的な人気や知名度では陳氏や蒋氏に劣るものの、台北市における実務能力や実績では二者を圧倒している。
地盤沈下の台北市復活をかけた市長選
そんな実務家の黄氏だが、弱点として浮上しているのが、副市長を辞めずに選挙戦に入ることだ。台湾でも選挙には時間も資金も必要だ。しかし、黄氏は副市長として、他よりも効率よく、低予算で選挙運動を展開できる可能性があるのだ。公私混同をどこまで明確に否定できるか、目下、黄氏に課せられた問題だろう。
いずれにせよ、黄氏の今後の動向は、陳氏と蒋氏の得票に大きく影響すると考えられている。
ちなみに、今回の選挙の争点の一つとされているのが、台北市のヒト・モノ・カネの停滞をいかに他市のように成長軌道に乗せられるか、柯氏によって失われた時間を取り戻せるかだと言われている。
筆者が住んでいた1980年代、90年代の台北は、市バスとタクシー、スクーターや乗用車が交通インフラの中心だったこともあり、職場や学校が市内にある場合、通勤通学の関係上、市内に住むのが一般的だった。だが、現在は台北メトロの充実で、交通インフラが大幅に整備された。一方で、子育て世代が、生活に比較的ゆとりのある近隣都市へ移るきっかけにもつながり、現在の台北市は高齢化と空洞化が著しいとされている。これに不動産価格が高騰し、若年層離れに追い打ちをかけているのだ。
柯氏も市長就任当初は市の再生に力を入れていたとされるが、11月の選挙が近づくにつれ、台北市の停滞ぶりが改めて浮き彫りになり、多くの市民が憤っていると言われている。古いままで廃れてしまうのか、あるいは息を吹き返し首都としての輝きを取り戻すのか、台北市の舵取り役を決める台北市長選に注目したい。
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