人口196万の札幌、年約200件ヒグマ出没の危機感 新幹線延伸、冬季五輪誘致に沸く陰で人的被害

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ヒグマ出没が増えている背景には、道内全体における総個体数の増加が根底にある。北海道では1962年の十勝岳噴火による降灰の影響などで、ヒグマによる人や農作物に対する被害が増加したことから、1966年から冬眠明けで動きの鈍いヒグマを対象にした「春グマ駆除」が始まった。

その後、人口増加に伴う宅地化や耕地化が進み、ヒグマの生息域が分断され、個体数の減少が懸念される事態となったことを受け、1989年度をもって春グマ駆除は廃止され、保護に重心が置かれるようになった。その結果、北海道のヒグマの推定生息数は、道の資料によると1990年度の中央値が5200頭、2014年度は1万0500頭、2020年度には1万1700頭と増加の一途をたどっている。

札幌特有の地理的・社会的状況

それに加えて、市域の6割が森林という札幌市の地理的、社会的事情もある。住民の高齢化、人口減少などに伴う市郊外の農地(耕作地)の減少と里山の荒廃、ヒグマの生息場所である森林ギリギリまで進んだ住宅開発により、ヒグマとの接点が増え続けている。

また、市内を流れる川や水路が多く、これがヒグマの移動経路となっている。さらに、市が進めた緑化計画で生まれた緑地帯が、これまたヒグマが身を潜めたり、移動する場所となってしまっているという。つまり、ヒグマにとって札幌市の郊外が活動エリアになってきてしまっているということだ。

そうした環境下でここ数年、今度は住宅街への出没が増え、昨年6月には近くに小学校もある札幌市東区の市街地にヒグマが現れ、次々と住民を襲い4人が負傷するという事件が発生した。周辺住民の避難が終了した後、丘珠空港近くの茂みにいるところをハンターによって駆除された。体重158キロの雄の成獣(推定4ー6歳)だった。今年度になってからも、東区や手稲区などの住宅街でヒグマらしき動物の目撃情報がある。

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