日経平均株価は「超重要ゾーン」を突破できるか 3万円回復には超えなくてはならない「厚い壁」

拡大
縮小

これから開始となるQT(量的引き締め・資産縮小)に関しては前回のコラムでも触れたが、2017年から2019年にわたって展開された際のアメリカの「QT相場」では、結果的にダウ平均は2万2000ドル台から2万7000ドル台に上昇したが、途中ではスタート地点に戻るほどの大きな急落に見舞われている。

3月の「9連騰ゾーン」抜けができるか、さらに重要に

日経平均株価の直近の連騰記録は3月14日(2万5307円)から25日(2万
8149円)までの9連騰だが、その後は売りに押され、5月には2万6000円割れまで追い込まれている。

理由は今とまったく同じである。「コロナ、ウクライナ、アメリカの金融引き締めによる景気後退」という3つの懸念だ。

投資家は相場の先見性を十分知っている。それでもまだ、この9連騰のゾーン(2万5307円~2万8149円)から脱出できるのか迷っている。このゾーン内の相場で考えると、今が売り時になるからだ。

それゆえ、2万7049円を超えたからといって、喜んではいられないだろう。日経平均2万8149円こそが「買い」に重きを置く投資家が真に喜ぶときだ。「2万8149円超え」にしか、日経平均3万円へ続く道がないからだ。

さて、FRBの資産縮小は6月1日からすでに始まっているが、6月から8月までは月475億ドル(アメリカ国債300億ドル、住宅ローン担保証券175億ドル)といわれている資産縮小は、当局の資産残高を見た限りでは、6月の実績ではその半分も実施されていないようだ。

FRBも利上げと量的引き締めを同時に進める中で、さじ加減を間違うと、取り返しのつかない本格的景気後退に陥ってしまうことを恐れている。もしそれらをすべて織り込んだうえでの今回の反発であれば、多くのファンドは相場観の修正を迫られる。

その意味では、前回のテーマだった「勝負週」は勝ち抜いたが、もっと重要な「ゾーン抜け」ができるか、それによって売り場か買い場も決まる「勝負週」が迫っている。

まずは重要指標や重要企業の決算を確認しよう。28日にはアメリカの4~6月期GDP速報値、29日にはユーロ圏やドイツなどの4~6月期GDP速報値、さらにはアメリカの6月個人消費支出などの結果やそれに対する市場の反応を見よう。

もちろん、27日のFOMCの結果と市場の反応、さらには日米で佳境に入る
4~6月期企業決算の結果によって「この勝負」は決まるだろう。いよいよワクワクする時間軸に入ってきた。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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