アメリカの株価上昇はあまり長続きしそうもない FRBの利上げと景気悪化以外のリスクとは?

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また、7月中旬からはアメリカ企業の4~6月企業業績発表が本格化している。今のところ株式アナリストによる業績予想の下方修正はかなり限定的だが、これまでの経済指標が示している経済減速やドル高による、業績への下押しの影響は今後、より顕在化する余地がある。

こうして見ていくと、7月中旬から始まったアメリカ株市場のリリーフラリー(悪材料が減ったことによる相場上昇)は長続きしないとみられる。今後は再度下落、主要株価指数は秋口までに6月につけた年初来最安値を下回る場面を想定しておくのが無難ではないか。

筆者は6月26日のコラム「アメリカ株の底入れ時期がようやく見えてきた」で、同国株は「年末にかけて懸念が和らぎ、底入れを探る」との見方を示した。現段階では、アメリカ株市場の底入れ時期は2022年末から2023年へとずれ込むリスクが高まっているとみる。

金融市場にとって最大の不確実要因は、前述したように「FRBの利上げで高インフレが制御されるかどうか」である。アメリカで今起きている経済減速は「失速」というよりも「緩やかな減速」とみられる。FRBの利上げが、このまま「ほどよく」行われるのかどうか。株式市場の主たる関心はこの点だろう。

欧州発の世界経済下振れリスクを警戒

ただ、筆者はアメリカ国外でも下振れリスク要因があると警戒している。
それは、欧州発の世界経済下振れリスクである。

欧州各国でもアメリカと似た高インフレへの対応が難しい状況に直面しており、ECB(欧州中央銀行)も7月21日に11年ぶりの利上げを開始した。だが、ロシアへのエネルギー依存度が高いため、供給をめぐっての政治リスクはアメリカよりも格段に大きく、インフレ制御はより難しい。

例えば、ロシアからのドイツへのガス供給パイプラインである「ノルドストリーム1」は、定期点検を経て供給が再開されたもようだが、ガス供給量はかなり抑制されたままである。

今後、ロシアからのガス供給が完全に止まる可能性は低いとみられるが、ガス供給が冬場までどの程度増えるかは、ウクライナとの戦争が長期化しているロシアの意向次第だ。もしガス供給が大きく抑制されれば、ドイツにおいて工場の稼働などの経済制約が強まる。供給制約に起因するエネルギー価格の上昇は、ヨーロッパの経済成長とインフレのバランスをとる政策対応をさらに難しくする。

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