関西鉄道ファンのヒーロー、「近鉄特急」名車列伝 写真で振り返る思い出の列車、約半世紀の記録

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近鉄特急にはビスタカー以外にもさまざまな名車がある。1964年の東海道新幹線開業以降、近鉄は名阪特急に加え伊勢志摩、奈良、吉野などへの観光特急にも力を入れるようになった。例えば1965年には南大阪線・吉野線の大阪阿部野橋駅―吉野駅間を結ぶ「吉野特急」が運行を開始した。

1967年には、その後の近鉄特急のスタンダードとなる12000系が登場。車内でビュフェ営業を行うためのコーナーを設けたことから「スナックカー」と呼ばれ、後継車の「新スナックカー」などとともに、近鉄各線に広がる特急列車網を支える車両として親しまれた。

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そして、新たな時代を築いたのはなんといっても1988年3月にデビューした 「アーバンライナー」21000系だ。最高速度がそれまでの時速110kmから大手私鉄初の120kmへ引き上げられ、難波―名古屋間は最速2時間5分、鶴橋からだと最速1時間59分となりついに2時間を切った。筆者はその姿を見た時、かつて取材した西ドイツ国鉄のET403形電車を彷彿とさせる外観に好感を持った。

2003年には「アーバンライナー」をさらにグレードアップした「アーバンライナーnext」21020系電車が営業運転を開始。21000系電車はリニューアルによって「アーバンライナーplus」となり、今でも主力特急の1つとして活躍している。

「しまかぜ」カフェは”食堂車“だ

アーバンライナー以降、さまざまな新型特急が立て続けにデビューした。1990年、吉野特急に26000系「さくらライナー」が登場。1992年には現在の汎用特急車の基礎となる22000系「ACE」がデビューした。1994年3月には、近鉄が志摩線沿線に開発したリゾートテーマパーク「志摩スペイン村」へのアクセスの一環として、サロンカーなどを備えた「伊勢志摩ライナー」23000系を投入した。

「伊勢志摩ライナー」試乗会時の車内(撮影:南正時)

現在の観光特急の代表は、2013年3月に運行を開始した伊勢志摩特急の50000系「しまかぜ」だろう。豪華な設備を誇る6両編成で、ダブルデッカーのカフェ車では沿線の食材を使った松坂牛のカレーライスや沿線産のワインなどを提供しており、事実上日本唯一の“食堂車”といえる。「しまかぜ」は登場以来、JRも含め全国の観光列車の中でも筆者のお気に入りだ。それは近鉄独自のスマートな接客サービスによるところが大きい。

一方、名阪特急の最新鋭は2020年3月にデビューした80000系「ひのとり」だ。これまで筆者が見続けてきた近鉄特急とは異質とも思えるほどの変貌ぶりだった。ただ、前面展望車はこれまでの私鉄各社のデザインにも似た印象で、長年近鉄特急を愛用してきた筆者にはどうしても違和感が拭えなかった。

そんな中、12200系「新スナックカー」が2021年11月20日に引退した。筆者が最も利用したであろう特急車である。そのラストランの姿をテレビのニュースで見た時、近鉄特急の1つの時代の終焉を迎えた気持ちになったのは筆者だけではあるまい。

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南 正時 鉄道写真家

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みなみ・まさとき / Masatoki Minami

1946年福井県生まれ。アニメーターの大塚康生氏の影響を受けて、蒸気機関車の撮影に魅了され、鉄道を撮り続ける。71年に独立。新聞や鉄道・旅行雑誌にて撮影・執筆を行う。

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