円安・株高は本当に持続するのか? 一時1ドル120円台、日経平均も1万8005円
[東京 12日 ロイター] - ドル円と日経平均があっさりと120円、1万8000円の大台を突破した。米雇用統計の上振れで米金利が上昇したことがきっかけだが、海外短期筋のポジションが軽いことで株高・円安のスピードが加速した。
ただ、米利上げ時期の見方は依然分かれており、買い一巡後の株高・円安の持続力には疑問も残る。
米雇用統計のインパクト広がる
期待感が一時高まったギリシャ支援の合意は見送りとなったが、マーケットでは失望にはつながらなかった。「ユーロ離脱のデメリットは双方同じだ。いずれ妥協に至る」(邦銀)と楽観視されていることもあるが、足元の円安・株高の材料は別なところにあるためだ。
株高のきっかけは円安、円安のきっかけは米金利上昇、米金利上昇の要因は米雇用統計と、一連の起点は米雇用統計にある。11─1月の3カ月間で100万人の非農業部門雇用者数増というインパクトは大きく、米連邦準備理事会(FRB)が6月にも利上げするとの予想が増えてきたという。
米利上げ観測が前倒しされる中で、米債市場では10年債利回り<US10YT=RR>は10日の市場で1カ月ぶりに2%を突破。為替への影響が大きい2年債<US2YT=RR>の利回りも0.67%まで上昇してきた。
ただ、このまま米金利が上昇するのか、見方は分かれる。「賃金が上昇しているものの、そのペースは緩やか。原油価格も不安定で持続的な物価上昇が見えたわけではない。いったん利上げしても、その後の利上げペースは緩やかになる」(りそな銀行・総合資金部チーフストラテジストの高梨彰氏)との見方も根強い。
変化率は米市場の倍
米利上げ見通しが固まっていないにもかかわらず、ドル/円<JPY=EBS>や日本株が一気に大台を回復させたのは、短期筋のポジションの軽さなどが背景にあるとみられている。
米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したIMM通貨先物の取組によると、投機筋の円売り越し額は3日までに5万9571枚に減少。 昨年12月の11万1000枚程度から約半分の水準となっていた。アベノミクス相場以降、5万枚台は「根雪」のような最低水準で、円ショートの積み増しに向かいやすいレベルだ。
外国人投資家は、1月の第1・2週で日本株を現物株と先物を合わせて約1.9兆円売り越した。第3・4週合計で約7000億円買い越したが、ヘッジファンドなど海外短期筋の一部は、まだショートポジションが残っているとみられている。
ドル自体や米株の上昇率よりも、円安や日本株の上昇率が極めて大きい。2月9日の水準と比べて、ドルインデックス<.DXY>は0.7%上昇しているが、ドル/円は1.5%上昇と倍のスピード。米ダウ<.DJI>は2日間で0.7%しか上昇していないが、日経平均は300円の大幅高(1.85%)となった。
デメリットも目立ってきた円安を日本株買いの手掛かりとするのは、円売りと日本株買いを組み合わせる海外短期筋の得意技。「海外の長期投資家は静かだが、海外短期筋のショートカバーに個人の売りがぶつかって久々の大商いになっている」(大手証券トレーダー)という。東証1部売買代金は今年初めて3兆円を超えた。
<アベノミクスの再評価ではない>
ただ、海外短期筋の買い一巡後に、円安・株高傾向が続くのか、疑問も出ている。12日の東証1部の業種別値上がり上位には、小売りや保険、銀行、食品と内需系が並んだ。自動車やハイテクなども上昇しているが、円安メリットを積極的に評価するような動きとは言いにくい。
市場では「あくまでスカスカだったポジションを海外短期筋が埋めに行った動きに過ぎない。アベノミクスが再評価されたわけではない」(邦銀)との冷めた見方も多い。
12日の市場で、日経平均は大台を付けた後は伸び悩んだ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は「米10年債利回りが2%に乗せたことで海外勢のシナリオの前提が変わったようだ。ただ、1万8500円、1万9000円をすぐに目指すとはいかないだろう。円安効果を除いた日本企業の競争力向上は、まだ確信できない。本決算での来期見通しをみるまでは、本格上昇は難しい」との見方を示す。
ドル/円も、120円を突破した後は足踏みとなっている。三井住友銀行・シニアグローバルマーケットアナリストの岡川聡氏は、米金利がこのまま上昇し続けることはないと予想。「仮に6月利上げとなっても、まだ4カ月ある。米利上げが始まっても、そのペースは緩やかになりそうだ。ドル/円がこのまま121円を超えて、どんどん上昇するとはみていない」と話している。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)
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