金融緩和で溢(あふ)れるマネー 再び世界を不安定化
北アフリカ・中東が火を噴いた。フェイスブックやツイッターなど新たな通信手段に注目が集まるが、本質的な理由は食料品・資源価格の高騰だ。食料を得られない人と大儲けする人の構図は当然、政治問題へ発展していく。
G20(20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議では、世界の経常収支の不均衡が、金融危機につながった米国発バブルの主因であるとして、議題に取り上げられた。米国は中国が為替介入を行って、人民元を低く抑えていることが不均衡を生んでいるとする。中国は、米国の大規模金融緩和で新興国に資金が流れ込み、商品市況の高騰などバブルにつながっていると非難。しかし、構造上は持ちつ持たれつの関係だ。
自国発のバブル崩壊で米国は、中国を中心とする新興国の好景気とバブルに、牽引役を頼むしかない。一方の中国も、輸出拡大による高度成長の果実を十二分に得ようとぎりぎりまで元版・プラザ合意を遅らせたい考えだ。
昨年秋の韓国G20に際し、経常収支の対GDP(国内総生産)比の目標を4%以内にするとの提案がガイトナー米財務長官から出されていたが、みずほ総合研究所中国室の細川美穂子研究員は、「中国の経常収支の対GDP比も2008年の9・6%から10年には5・2%まで下がっている。4%は輸入を増やせば達成可能な範囲を提示したもの」と見る。非難しつつも歩み寄りが行われている。
ベースに農作物の需要増大があり、干ばつなどの気候変動の影響が加わり、さらにあふれるマネーが需給の振れを拡大する。超大国の狭間で、発展から取り残されたアフリカの人々を、歪みが直撃している。
新興国ではインフレに対する警戒感が高まり、昨年から引き締めぎみに転じている。原油価格高が続けば、引き締め策が追加されるだろう。