販売チャネルの持つ重要な機能として、見込み客・顧客との「接触」をすることと、その機会で「販売促進」を行うことがある。セブン−イレブンの棚のエンドのコーナーで陳列を展開することは、ゴディバ単独ではなし得ないことだ。
一方、「間口拡大」はリスクもともなう。既存顧客の離反。ターゲット層の拡大や、「手軽に手に入る」という利便性を高めたポジショニングは、ゴディバの「スペシャルティー」に惹かれている従来のファンが感じている価値を損なう危険性と表裏一体である。実際に2007年9月9日付日経MJのインタビューで、当時のゴディバ・ワールドワイドのジム・ゴールドマン社長が、「拡販で希少価値が薄れないか」との質問に対し、「ブランドは守らねばならず、百貨店に出る際は売り場の内外装に投資している。低価格志向の店には商品を置かない」と明言していたほどだ。
では、どうするか。一つの解は、「期間限定」だ。もとより、「エンド」はシーズン商品やギフト商品のためのコーナーだ。3月14日のホワイトデーが終わればゴディバの商品は姿を消すだろう。もう1つのアイスクリーム棚の商品はどうか。恐らく、春本番前には姿を消すと思われる。いい商品を少量食べたいと思う冬季限定の展開である。間違っても「ガリガリ君」が棚を3つも4つも占有するような暑い季節まで居続けることはないはずだ。
どんなにいい商品を作っても、消費者に手に取ってもらえなければ売れない。販売チャネルの構築と、そこで行われる販促は、商品とターゲットとの整合性を保ちつつ息の詰まるようなチャンスとリスクのバランスの両面を見据えながら展開されているのである。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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