JR西日本が開拓、鉄道に続くもう1つの「高速網」 鉄道用光ファイバー活用、JR他社はどう動く?

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制度面での違いもある。鉄道事業者であるJR西日本は線路の外に回線を構築することができない。よって、外部の事業者が光ファイバー芯線を借りたい場合は自前でJR西日本の光ファイバーの機器室まで回線を準備する必要がある。

一方、JRWONは電気通信事業者として登録されており、線路外に回線を構築することが可能だ。外部顧客のために敷設工事ができるほか、NTTテレパーク堂島など大阪市内の主要なDCに入線済みであり、DC経由での利用も可能だ。

九州新幹線の「つばめ」。JR九州も今年3月から光ファイバー芯線の賃貸サービスを始めた(写真:K481/PIXTA)

ほかのJR各社は情報通信ビジネスにどのように取り組んでいるのだろうか。JR九州はグループ会社のJR九州電気システムが3月から九州新幹線博多―鹿児島中央間に敷設された光ファイバー芯線の賃貸サービスを開始した。

JR東日本は東北、上越新幹線のほか、首都圏や地方の主要路線などに敷設された光ファイバー芯線の貸し出しサービスを2007年から行っている。JR西日本やJR九州とは異なり本体が担当するが、今年3月に光ファイバー芯線の貸し出しエリアや具体的な活用例をホームページ上で明確にするなど、ユーザー目線での取り組み強化に動く。

ほかのJRは「余力がない」

一方、JR東海はこうした事業を実施していない。その理由についてJR東海は「当社における回線状況を踏まえると、新たに貸し出し事業を始めるほどの余力が十分にない」と説明する。

他社と異なりなぜJR東海だけが芯線を貸し出すだけの余力がないのか。その理由について改めて確認したが、「鉄道事業を円滑に運営するうえで将来も含めて必要な回線を確保する必要があり、それらを考慮すると、新たに貸し出し事業を始めるほどの余力はない」とのことだった。

JR四国は「事業化にあたっては本州方面との接続が不可欠」としているが、「現行設備では貸し出し可能な芯線はないため、仮に貸し出し事業を行う場合には事業用設備の増強が必要であり、現時点で事業化を検討する段階にない」とのことだった。いろいろとハードルがあり、すぐの事業化は難しいという。JR北海道も「光ファイバーの貸し出し可能な余裕はない」という。

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