「山下達郎」新アルバムが大ヒットした納得事情 11年ぶりオリジナル・アルバムの注目点

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しかし、それらは山下のキャリアの最初の10年の間に量産されていたものであり、すでにこの20年ほど、この路線の新曲は発表されていない。もてはやされている今だからこそ、逆に避けたのだろう。

今作も大ヒットとなった要因はいくつも挙げられる。まずは「出たら買う」というコア層のファンの数の多さ。前作との間が空いたことからくる渇望。主要ファン層が現物を買いたい世代であること。前述したシティ・ポップ人気(筆者は彼をシティ・ポップのくくりの中で捉えたことはなかったけれど)。そしてもちろん、内容の充実。これはむしろ発売直後よりもその後の売れ方で評価されていくものだ。

そして大PR作戦。これも毎度のことではある。何せ在籍レコード会社の「大人気」クラスであり、所属事務所の稼ぎ頭は山下・竹内夫妻。彼(ら)の活動、によって多くの人の生活や会社の今後が左右されるのだから。

「PRが過剰」という指摘は筋違いだ

さて、そのPR方法およびその反応について「過剰だ」「必死感があり気持ち悪い」「いろいろなところに出すぎていて格好悪い」といった声が散見される。そうだろうか。

PRが過剰というなら1980~1990年代のほうがずっと過剰だった。民放局では、本人出演がなくても多くの番組が彼の新作を取り上げて過去曲も流す特集状態だったし、雑誌も邦楽を取り扱う音楽雑誌にはほぼインタビューが載った。一般誌・女性誌の取材も多かった。なにより発売されている雑誌の種類自体が多かった。

今回増えたのはウェブ取材とテレビへの音声での出演ぐらい。特にテレビ出演へのリアクションは「さすがはテレビ!」といえる大きさがあり、確かにそれに関するSNSでの言及は目立った。

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