「山下達郎」新アルバムが大ヒットした納得事情 11年ぶりオリジナル・アルバムの注目点

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また、アルバムに収録しないとカタログとして残りにくい、シングルは買わないという人も一定数いるので、アルバムに収録しないと彼らの耳には届かないことになるし、シングルは発売してもほどなくCD店の在庫として扱われなくなるので、アルバムに収録しておきたいという理由も、商業音楽である以上は当然のことだ。

特に今回は間が空いたので、さながら「この10年間のグレイテスト・ヒッツ&モア」という趣もある(山下のシングルは今世紀に入ってからのほうがチャート成績はいい)。しかしこの30年ほど、つまりキャリアの半分以上はもうこの形なので、今さら指摘・非難されるべきことではない。

そして、アルバムを購入してもハードディスクに落とした後に飛ばし聴きされるのが主流の世の中になって久しいというに、曲順に特段の配慮がなされているのはうれしい。アルバム全体の流れをみると、CD時代の初作「ARTISAN」(1991)から竹内の「TRAD」(2014)に至る作品群との共通点に気づくだろう。

新しい要素を加え、「前進」を感じさせてくれる

アルバムの内容は、毎度、彼が言うところの「五目味」だ。この数年の世の中の流れを汲んだダンサブルなポップ・ナンバー、1人多重録音によるドゥー・ワップ、シュガー・ベイブの頃からのお得意であるアメリカ東海岸スタイルのシャッフル、ニュー・オーリンズ・スタイルのファンクなど。

各タイプとも以前のどれかしらの楽曲の延長だが、自作曲を数百曲作っている人ならば当たり前と考えるべきだろう。それよりもつねにそこに新しい要素を加え、「前進」を感じさせてくれる点にいつも感服している。これは例えば、宮崎駿がフルCGしかも少人数で、でも一見それを感じさせない「いつもの宮崎ワールド」の長編を作ったようなものだと思う。その意味では、聴き手それぞれの好みとは別の次元の話として、つねに最高傑作を生み出しているといえる。

「続き」を作ってくれていないのは、彼自身の16ビートのリズム・ギターが心地よく鳴り響くディスコ調のファンク・ナンバー。近年、海外発信で再評価が進んでいる、いわゆるジャパニーズ・シティ・ポップのファンが最も望むものだ。

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