韓国人が安倍元首相死去に複雑な感情を抱く理由 強い指導者、歴史修正主義者…保革で評価分かれる

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安倍政権が2019年8月に半導体部品に関する韓国への輸出を規制する手段に出たことは、韓国に強い衝撃をもたらした。日本政府が輸出管理で優遇措置を与えていた「ホワイト国」(グループA)指定から韓国を除外し、さらに半導体関連部材を包括輸出許可から個別の許可に切り替えるようにした事件だ。サムスン電子など世界の半導体市場で高いシェアを持つ韓国が部材調達に困難を来すことになるものだった。

日本政府は規制を強化した理由として、「日韓関係の信頼喪失」「韓国への輸出管理で不適切な事案が発生したため」と説明したが、韓国では元徴用工への賠償を日本企業に命じた韓国大法院(最高裁判所)判決など元徴用工問題の解決に消極的な文政権への報復と捉えられた。これにより、日本製品不買運動まで生じた。

こういった対韓外交も、安倍氏の強いリーダーシップで行われたものであり、「史上最悪の日韓関係」を回復不可能と思われるまで悪化させた。

韓国保革「陣営」の論理

嫌韓右翼と歴史修正主義者のシンボル――。韓国での安倍氏への大方の評価はこの通りだが、保革対立が激しい韓国では、立場によって安倍氏の評価は微妙に異なっている。

革新(進歩)陣営からすれば、前述したような歴史修正主義者であり、植民地支配当時のように韓国を上から目線で相手にした人物だ。韓国を抑えながら日米同盟を強化することで北東アジアの安全保障をリードし、当時の文政権が推進しようとした「朝鮮半島平和プロセス」政策を妨害する人物とも見られてきた。半導体の輸出管理規制も、「妨害する日本と距離を置くよい機会だ」として受け止められ、関連部材の日本離れを進めるきっかけになっている。

一方で保守層は、中国や北朝鮮よりも日本は近くにいるべき存在であり、安倍氏はそんな日本の中心人物として重要視していた。とくに文政権の親北・親中路線に不満を募らせてきた保守層は「できるだけ早く日韓関係を改善すべきなのに、文政権は日本が輸出規制を行うほど韓国を怒らせてしまった」との考えから、元徴用工問題をきちんと解決できない文政権への不満が強かった。そのため日本政府による輸出規制に対しても、革新支持層より怒りの度合いは相対的に低い。

安倍政権での韓国外交に、「日本の背中を追いかけ、すでに追い抜こうとしている韓国の経済成長と国際社会でのプレゼンス向上という状況において、安倍氏がより広い視野で韓国の存在を考えられなかったのか」(韓国の外交研究者)という指摘がある。日韓間の力関係が徐々に変化しているときに、安倍氏は東アジアでの外交・安全保障政策において韓国という存在を安全保障や経済など自国のためにもっとうまく生かせたのではないか、という視点だ。

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