元自衛官が安倍氏銃撃「プロの犯行」といえるのか 自作銃を使用、防衛省・自衛隊幹部が語ったこと
メディアが報じた山上容疑者の経歴を整理すると、2002年8月に海上自衛隊の佐世保教育隊へ入隊、同年12月に広島県呉市を母港とする護衛艦「まゆつき」へ配属、2004年4月に広島県江田島市の第1術科学校へ配置、2005年8月に海士長の階級で退職となる。
この経歴だけ見れば、山上容疑者は3年間にわたり海上自衛隊に勤務し、戦闘艦艇にも乗り組み、術科学校での専門教育も受けているように見えるので、社会部記者による第2のオズワルドという指摘もあながち間違いではない。
ただ、現在、ある護衛艦で艦長を務める人物に聞いたところ、山上容疑者とは面識がないと断りながら、こう説明した。
「容疑者の経歴を見る限り、海上自衛官としての専門教育は受けていません。彼は専門教育を受ける前に1任期で退職した、いわゆる“アルバイト隊員”であり、軍事技術に習熟したプロの自衛官ではありません」
高校卒業時に入る人の多くは任期制隊員
陸海空自衛官の採用形態は多岐にわたるため、山上容疑者の経歴にフォーカスして海上自衛官の採用から教育、護衛艦の艦内編制について、護衛艦艦長に話を聞いた。
まず自衛官の構成は、部隊を指揮する「幹部自衛官」、幹部自衛官を補佐して、チームリーダや軍事技術者としての役割を担う「曹」、曹の指揮下で各種任務を直接遂行する「士」に大きく分けられる。「士」の採用ルートも複数あるが、山上容疑者は「練習員」(前述の護衛艦艦長)として入隊したという。
練習員とは海上自衛隊で任期制自衛官が基礎教育を受けているときの呼称で、現在は制度が変わり自衛官候補生と呼ばれている。いわゆる水兵のことでセーラー服を着用する。
任期制自衛官の在職期間は陸海空自衛隊で異なり、当時は陸自では約2年、海空自では約3年を1任期とし、その後継続勤務を希望すると2年間の任期を繰り返していた。このため自衛隊内では、プロの自衛官である幹部自衛官や曹と区別する意味合いで、任期制自衛官をアルバイト隊員と揶揄することもある。
高校卒業時に「自衛隊に入る」人の多くは任期制隊員だ。おおむね1任期か2任期で退職するか、2任期以降に曹への昇任試験を受けて自衛隊に“就職”する道を選ぶことになるが、数学や物理、英語など一般教養と専門技術の試験を突破することは容易ではない。
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