「最大実力者」安倍氏死去で自民党はどう変わるか 憲法改正、金融緩和で「カリスマ」不在に
政策面はどうか。安倍氏は自民党の憲法改正の「顔」となってきたが、それに代わる党幹部は見当たらない。
安倍氏は防衛費の大幅増額を訴えてきたが、自民党内には「増額ありきではなく、必要な防衛装備を積み上げていくのは本来の姿」と主張する防衛関係議員も少なくない。与党の公明党内には大幅増額に慎重論が根強い。
年末には国会安全保障戦略や防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の国防3文書の改訂が予定されており、安倍氏の不在が、政府・与党内の論議に影響を及ぼすのは確実だ。
金融緩和継続の流れが弱まる可能性も
経済政策で安倍氏は日銀による金融緩和の継続を主張。日銀の審議委員の人選などについても注文を付けていたという。ただ、日米の金利差が拡大し、急激な円安が進み、物価高の一因にもなっている中で、政府・与党内に金融緩和の見直し論が台頭。安倍氏ら緩和継続派との論争が始まりそうな情勢だった。
安倍氏の死去を受けて、緩和継続の流れが弱まる可能性がある。財政についても、安倍氏は積極的な財政出動を求めていたのに対して、麻生氏や額賀福志郎元財務相らは財政再建の道筋を明確にすべきだと主張。年末の予算編成で両者の対立が強まりそうな雲行きだったが、積極財政派は安倍氏という旗印を失ったことで戦略の見直しが迫られている。
安倍氏は祖父が岸信介元首相、父が安倍晋太郎元外相という系譜を引き継ぎ、自らも憲政史上最長の首相在任期間という記録を樹立。政局でも政策でも「カリスマ」として君臨してきた。首相退陣後、その影響力は弱まるかに見えたが、最大派閥の会長に就いたことなどで復権を果たした。その安倍氏が凶弾に倒れたことで、自民党内の構図は大きく変わるだろう。それは、日本政治全体の流動化につながる可能性がある。
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