ゴールドマン・サックスが進める調査部門「汎アジア化」改革の実態--堀江伸・投資調査部門統括

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--アナリスト採用時の英語力はどこまで求めるか。

日本の調査部でも毎年、新卒を2~3人程度採用しているが、採用の段階で英語のできない人は基本的に採らない。そこの「バー」はすごく上げている。最終選考に残る人は、TOEICで900点以上がほとんど。入社後から教育するようでは追いつかない。今も社内メールや部会、プレゼンテーションはすべて英語だ。

■グローバルなプラットフォームが生み出すサービスの提供力と均一性

--日本の野村ホールディングスや大和証券グループ本社なども近年、アジアを大幅強化しているが、脅威に感じているか。

もちろん競合は感じているし、アナリストを引き抜かれるのは困るが、それによってわれわれの戦略がブレることはない。われわれはアジアだけで最適化しているのではなく、グローバルな戦略の中で各地域が粛々と同じようにやっている。現状、米欧アジアの世界3地域すべてでトップ3に入っている証券会社は当社以外にはない。グローバルなサービス提供力や、サービスの均一性がわれわれの強みだ。

たとえばCROCI(クロッキー Cash Return On Cash Invested=現金ベースの資産収益率)をベースにしてバリュエーションを行うやり方がある。もともとは当社のロンドンで開発したものをグローバルに展開している。完全にでき上がっていてトラックレコードのある仕組みをアジアにも短期間に導入して、計算できるのは、グローバルなプラットフォームがあって、時間とおカネとシステムが投資されているからこそ。これが大規模な年金基金など長期投資家向けのサービスで非常に大きな効果を発揮している。

--中国でビジネスをやるうえでのリサーチにおける最大の武器は何か。

中国当局が本当に求めているのは、高い「スタンダード(品質)」を中国に導入するということだと考えている。リサーチのクオリティにしても、人の教育にしても、高い品質が中国に持ち込まれることを望んでいる。だからこそ、(証券会社としても)グローバルなハイ・スタンダードがあるかどうかが最初のエントリーバリアになるのではないか。

ほりえ・しん
日本証券アナリスト協会検定会員、早稲田大学法学部卒、シカゴ大学大学院修了(MBA)。 野村総合研究所にて8年間、野村インターナショナル(香港)にて2年間、資本財およびアジア・テクノロジー・セクターを担当後、1998年ゴールドマン・サックス入社。 2007年7月、投資調査部門統括に就任。『インスティテューショナル・インベスター』誌によるアナリスト・ランキングにおいては、01年から06年まで連続して、精密機械部門で第1位に選ばれる。

(中村 稔 =東洋経済オンライン)

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