不況知らず?ヴィトンが世界で売れるワケ 親会社LVMHの日本売り上げは8%も増加
比べてみると、2013年にその伸び率は7%だった。さらに2009~2012年を振り返ってみると、昨年の数字は当時の2ケタ成長の半分くらいでしかない。背景としては、たとえば主要な高級品市場の中国では国内の景気が冷え込んだうえ、政府が国民に奢侈(しゃし)を戒めて倹約令を掲げている。またカネ離れがいいロシアからの観光客が、ウクライナ危機とルーブル安の影響により減少した。さらに原油価格が急落しているため、高級衣料、宝飾品、高級ワインなどを好む中東のエリート層の購買力が下がることも心配されている。
LVMHによると、ファッションと革製品の部門の営業利益は32億ユーロで2%増。売り上げは前年の99億ユーロから108億ユーロに増加した。
「景気動向、通貨相場、政情不安の影響はあっても、LVMHはすべての部門で2015年も成長を続ける勢いが十分にある」と、ベルナール・アルノーLVMH会長は述べた。
稼ぎ頭のヴィトンにもテコ入れ
LVMHにとって何といっても最高に価値があるブランドのルイ・ヴィトンは、グループ全体の売り上げの3分の1、利益の半分近くを占める。だがヴィトンも、近年はグッチやプラダのようなライバル同様、ハクが薄れてきた感がある。よく売れるからといって世界各国に次々と店舗を開いた結果、ありがたみが減ってきた。
そこでLVMHはルイ・ヴィトンのブランド販売戦略を見直した。価格が低めの財布やキャンバス地のバッグよりも、高価な革のバッグや限定版の商品に力を入れたのだ。それと同時に、120年の歴史を持つ茶色と金のモノグラム「LV」が入った製品を減らした。最近の高級品志向の消費者は、ステータスや富を示すものとして、もっと特別で繊細な感じを求めるようになったからだ。
作戦の先頭に立ったのは2013年に女性向け服飾部門のアーティスティック・ディレクターとして入社したニコラ・ジェスキエール。それまで彼は15年間バレンシアガに在籍していた。
2014年にジェスキエールが生み出したヒット商品「プティット・マル」は、旅行鞄専門店として創業した歴史を物語るようなハンドバッグだ。伝統的なトランクのミニチュア版のような箱型クラッチで価格は5200ドル。ジェニファー・コネリー、シャルロット・ゲンズブール、ミシェル・ウィリアムズなど、撮影用にレッドカーペットでポーズを取るようなスター女優たちにすぐ愛用されるようになった。