トヨタと日産・三菱自のEV、出足から分かれた明暗 個人向け振るわぬトヨタ、新販売方法で苦戦

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価格を抑えることがEV普及のカギになるとの見方は、業界内にも根付きつつある。EV用モーターで攻勢をかける日本電産の永守重信会長は、6月17日の株主総会でEVの価格について言及。「現状では高すぎる」としたうえで「600キロも走れるEVは必要ない。使用状況を考えれば100キロ走れば十分」と話した。

クルマの利用法が根本から変わる

そもそもトヨタがbZ4Xの個人向けをキントのみで展開したのは、電池の劣化や下取り価格、メンテナンスに懸念を持つ消費者の不安を払拭するとともに、車両が必ずメーカーに戻ってくる仕組みとすることで車載電池のリサイクルを進める狙いがあったからだ。

また、ソフトウェアやハードウェアのアップデートにも対応することで、車両の売り切りビジネスから脱却し、車両の引き渡し後も継続的に収益を上げる次世代のビジネスモデルの模索も狙いだった。個人向けの受注が伸び悩んでいる状況をトヨタは今のところ静観しているが、今後日本市場でEV展開を本格化させていくうえでは、販売施策の軌道修正をするか今後の判断が注目される。

潤沢な補助金がいつまで続くかも課題だ。現在、国の制度を活用すれば最大85万円(軽EVは最大55万円)の補助金が出る。さらに、都道府県や市区町村などの自治体では独自にEVへの補助金制度を導入しているケースもある。

例えば、東京都の場合は最大45万円、葛飾区では最大25万円(軽EVは約14万円)の補助金が出る。葛飾区民なら、国と都も合わせた補助金が110万円超になり、実質半額で軽EVが購入できることになる。補助金は新車の競争力以上に販売台数を押し上げる効果もあり、販売会社からは「補助金が切れたときにどれだけ売れるかは読みにくい」との声も聞かれる。

足下では半導体不足による供給制約が続いている。日産では試乗車や展示車の供給がいまだ行き届いておらず、「5店舗で1台を使い回している状況」(首都圏の日産系販社幹部)というケースもある。競合他社も同じ状況とは言え、「実車を見ないと買わないというお客様は多い」(同)だけに、まずは1台でも多く生産台数を積み上げることが求められている。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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横山 隼也 東洋経済 記者

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よこやま じゅんや / Junya Yokoyama

報道部で、トヨタ自動車やホンダなど自動車業界を担当。地方紙などを経て、2020年9月に東洋経済新報社入社。好きなものは、サッカー、サウナ、ビール(大手もクラフトも)。1991年生まれ。

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