私はこうやって1日で医療費2万ドルを集めた 医療保険未加入でも高額医療費を賄うには
アリゾナ州に住むモニカ・パタキの家族は、医療費を支払いきれなくなって友人や親族の助けを借りることになった。
母マーガリートはカリフォルニア州在住の76歳で、昨年夏に脳卒中で倒れた。介護施設であれば医療保険で費用をカバーできたのだが、これまでは自宅療養を続けてきた。
「突然、医療費が雪だるま式に膨れ始めた」とパタキは言う。「父は支払いに追われていた」。子どもたちの資力も限界に達し、一家は12月初め、ギブフォワードで寄付集めを始めることにした。目標額は介護士の費用などをまかなうための1万1648ドルだ。
少額から寄付できるのがミソ
「設定に15分もかからなかった」とパタキは言う。「持っているものすべてを売り払う以外で、思いついた最もいい方法だった」。寄付集めに勢いをつけるため、パタキは数十通の電子メールを送った。
寄付に応じたひとり、マーリーン・ロビンソンはカリフォルニア在住の発明家でパタキ家の知人だ。「情けは人のためならず」と考えるロビンソンは「共感できるキャンペーンがあれば支援したい」と語った。「自分も一緒に目的達成の力になれるということだから」
ケアマネのフリッカーに言わせれば、少額だからこそ寄付に応じてもらえる可能性は大きくなる。そんなわけで、1ドルから寄付を受け付けているサイトも少なくない。
とは言うものの、成功例には必ず、見る人の心を動かす物語がある。たくさんの写真や病気の家族についての細かい情報を公開することが、寄付金を増やすカギになると専門家は言う。パタキ家でも写真6枚をサイトで公開した。
動画で寄付金150%アップも
たとえ携帯電話で撮ったものでも、動画があればさらに親しみを感じてもらうことができる。「動画が1本あれば寄付は150%多く集められる」と、インディーゴーゴーの共同創設者であるダナイ・リンゲルマンは言う。
とはいえ高齢で最近のテクノロジーに明るくない人だと、ネットを介した寄付に抵抗を感じるかもしれない。そこでパタキ家では、家族ぐるみの付き合いのある高齢の友人たちには電話で寄付を依頼した。
「(高齢の人たちとは)じかに話をするほうがうまくいく」とパタキは言う。「みんな優しくて、小切手を送ってくれた」
ただし家族はつらい思いを乗りこえなければならなかった。「内輪の話をネット上でいちいち説明するのだから、プライドが傷つく」とパタキは言う。それでも寄付集めが進むにつれ、寄付に応じてくれた人々は資金がないことを哀れんでいるのではなく、母の話に心動かされているのだということに気がついたという。
ちなみに米国では個人がクラウドファンディングで集めた資金には税金がかからない。オースティンによれば、米税制ではこうした個人的な事情で集まった寄付は贈与として扱われる。
ただし寄付集めには元手が必要なこともある。個人向けクラウドファンディングサイトのなかには利用料を取るところもあるからだ。たとえばギブフォワードは集まった額の7.9%に加え、寄付1件につき50セントの手数料を徴収する。
それでもケビン・ブレーフォーグルは、クラウドファンディングのおかげで希望を手にすることができた。
寄付募集の期間はあと1カ月残っている。だが「経済的に非常に厳しい状態にあるという気はしなくなった」と彼は言う。
(執筆:Constance Gustke記者、翻訳:村井裕美)
(c) 2015 New York Times News Service
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