「超売り手」米労働市場に潜む雇用ミスマッチ問題 みずほリサーチ&テクノロジーズの小野氏に聞く
「大退職時代(The Great Resignation)」――。
コロナ禍によって仕事を辞める人が大量に増えた現象がこう呼ばれるようになった。労働の供給力が細る一方、需要は増え続け、アメリカでは賃金の伸びが中央銀行の物価目標と釣り合わない高さまで加速している。
この先のアメリカ労働市場をどう読み解けばいいのか。みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部の小野亮氏に聞いた。
労働参加率はなお低水準
――アメリカでは働き手の不足が深刻で、昨年頃から「大退職時代」が訪れているとも言われています。
アメリカの労働市場は引き続き、「超売り手」になっている。労働省によれば、4月の求人数は1140万人に達するが、仕事を探している失業者数は594万人しかいない。失業者数は少ないほうがよいのは言うまでもないが、そもそも労働供給に問題がある。
生産年齢人口に占める労働力人口の割合を示す労働参加率が5月は62.3%で、2022年に入って急回復しているものの、過去の長期的なトレンドから見てなお低水準にある。
その結果、労働力の需要と供給に乖離が生じ、主要な賃金指標である雇用コスト指数や、時間当たり賃金が急加速している。賃金の伸びは、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が掲げる2%のインフレ目標と釣り合わないほどの高さだ。
――コロナ禍の影響が残っているということなのでしょうか。
コロナ禍によって、職場復帰に伴う感染への不安などが、労働者の早期引退など、いわゆる非労働力化の要因となったことは確かだ。
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