「Web3.0と仮想通貨」今さら聞けない基本中の基本 「主権のある個人が判断すべき」ビットコインの精神

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「正しさ」は個人が判断すべきこのため、経済取引におけるプライバシーの保護というのは、個人が国からの圧力に屈せずに自立した生活を行う上で重要であり、その実現はビットコインにこめられた思いでもあります。

ビットコインのいちばん大事な目的は、より安くより速い送金を達成することではなく、人々の主権(Sovereignty)を確保することにあるという見方もあります。何が「正しい」取引なのかは、国や企業ではなく主権のある個人が判断すべきであるというのが、ビットコインの精神なのです。

Web2時代のプライバシー保護の失敗

インターネット上の利用者データの取り扱いをめぐってビットコインの精神を引き継いだプロジェクトがあります。ブレイブと呼ばれるウェブブラウザです。そしてブレイブが意識しているのは、Web2時代のプライバシー保護の失敗を乗り越えることです。とりわけ2018年にフェイスブック(現・メタ)が起こした個人情報をめぐる大きなスキャンダルです。

フェイスブックは、2018年に個人情報の流出問題に揺れました。イギリスのデータ分析会社ケンブリッジ・アナリティカがフェイスブックの最大8700万人分の利用者データを使い、2016年の米大統領選とブレグジット(英国の欧州連合離脱)をめぐる国民投票の結果に影響を与えたとされ、スキャンダルになりました。フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグは2018年に米議会の公聴会に呼ばれ、謝罪に追い込まれました。

ブレイブは、インターネット上に溢れる広告によって利用者の個人データを企業が吸い上げ、ウェブサイトの速度を低下させているWeb2の現状を問題視しています。解決策としてブレイブが掲げているのは、広告の自動配信のブロックとそれによる高速化の実現です。

一方、広告を意図的に閲覧した利用者に対してはBAT(ベーシック・アテンション・トークン)を提供し、また応援したいブレイブ基盤のサイトに対してチップとしてBATを送るという選択肢を与えています。このようにブレイブは、利用者と広告主、そしてウェブサイトの互恵的な共存関係の成立を目指しています。

本稿執筆時点で、BATの時価総額は10億ドルほどです。日本でも複数の取引所がBATを取り扱っています。

誤解を恐れずに言えば、2021年以前、仮想通貨といえば大抵はビットコインのことを意味していました。2018年に始まった仮想通貨の世界的な低迷期を指す「冬の時代」で、ビットコインの仮想通貨市場全体に占める時価総額の割合(ドミナンス)は50%以上を常に維持し、ほとんどの期間で60%を超えていました。

次ページ潮目が変わったのは2021年3月11日
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