クラウドファンディングは地方の鉄道を救うか ファンだけでなく鉄道事業者自ら実施する例も

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現在コロナ禍ではあるものの、感染対策を行ったうえで同鉄道を訪れる人も多く、地域鉄道としての主な収入源である「地域と観光」、この両方の継続的な運営に向けたやり方だと評価できる。

鉄道事業者自体が行ったクラウドファンディングもある。「北条鉄道の挑戦。引退したキハ40気動車をもう一度走らせよう。」という企画だ。

北条鉄道は国鉄北条線の廃線に伴い、第三セクター鉄道として開業した。兵庫県の粟生駅から北条町駅の間、13.6kmの区間を運行している路線である。車両の増備に伴い、JRからキハ40形車両を購入する計画で、入線後の改造費用目的として、クラウドファンディングを行ったのだ。当初の目標金額300万円に対して、最終的になんと1302万円もの支援金が集まり、車両の導入が行われた。

いわば「ふるさと納税」

鉄道事業者が行うクラウドファンディングは、副業(グッズ制作や不動産)に裾を広げるのではなく、本来の「安定的な運行」という目的が明確に分かりやすく、支援者にも理解されやすい。支援者にはリターンがお礼として届くため、いわば「ふるさと納税」に近いかもしれない。

日本国内における地方鉄道存続のための施策として、クラウドファンディングがさらに広がっていければ良いと思う。

「地元の鉄道は地元で守る」。そのことを、国にアピールして交流の輪などを広げていくことが、今後の鉄道存続につながっていくと思う。公共交通は運行事業者だけに任せるという考えはもはや「時代遅れ」である。

渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

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わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

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