乗客減でも収入維持、「異業種」鉄道会社の戦略 地域の活性化に一役買う「京都丹後鉄道」
地方鉄道は、少子高齢化による通勤・通学需要の減少に加え、沿線の過疎化などの進展もあり、経営環境はますます厳しさを増している。従来のように通学利用などに依存するのではなく、外部から観光客を誘致して「観光鉄道」への脱皮が必要となる。
だが、観光鉄道へ脱皮するとしても「生活路線」としてのサービスは維持しつつ「観光」を付加価値とする必要がある。観光に特化すると、誘客の状況に大きく左右され、風評被害にも弱くなるからである。
その点で、注目に値するのが京都丹後鉄道だ。2019年6月、日本交通学会関西部会で京都丹後鉄道の本社を訪問した際、同社の寒竹聖一社長は「付加価値を付けながら客単価を上げる経営戦略を採用しており、収入減になっていない」と語った。
事実、同社は乗車人員は減っているものの、減収にはなっていない。同社の資料によると、乗車人員については2015年度以降減少が続いているが、2019年度の売上高はすでに2015年度を上回っている。沿線の人口減少が想定を上回るペースで進む中、地域輸送を維持しつつレストラン列車や駅のカフェなど話題作りに力を入れ、一定の収入を確保している。
赤字額最大だった三セク鉄道
京都丹後鉄道は宮津―福知山間の宮福線、宮津―西舞鶴間の宮舞線、宮津―豊岡間の宮豊線からなる。上下分離されており、インフラは京都府などが出資する第三セクターの北近畿タンゴ鉄道が保有する。列車を運行する第2種鉄道事業者はWILLER TRAINS株式会社で、同社が京都丹後鉄道の名称で営業している。
もともと北近畿タンゴ鉄道は、インフラの保有と列車運行を行う第1種鉄道事業者として1988年7月に開業し(当初の社名は「宮福鉄道」)、新規開業の宮福線とJRから引き継いだ宮津線(西舞鶴―豊岡間)を運行していた。だが、2000年代に入ると、沿線の過疎化や少子化なども加わり、2009年時点では国内の第三セクター鉄道の中で赤字額が最大だった。
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