海外の飲食店や職場などで、人々が気軽に言葉を交わす姿を見ていると、「日本人は頭抜けて雑談が苦手な国民である説」も、「さもありなん」と感じてしまいます。
その理由としては、まず、「雑談が無駄」であるととらえる風潮が強いということが挙げられるでしょう。そもそも、「以心伝心」「上意下達」「無口上等」という文化の下で、コミュニケーション「技術」「スキル」を磨く機会がほとんどありませんでした。
かつては、他人とのかつては隣近所との付き合いや世代の違う人々との交流の中から、雑談術を学んできたわけですが、核家族化、都市化の進展で、そうした場も減ってきています。「飲ミュニケーション」も今どきはなかなか難しい。そうした流れの中でのコロナ禍、ということで、日本人の雑談力は低下傾向にあるというわけです。
日本人は世界の中でもとくに「幸福感が低い」ことで有名ですが、こうした閉塞感や不安の裏にある要因のひとつが、「人とのつながり」の希薄化です。
じつは人の幸福感や健康を決定づける第一の要因は、お金でも仕事でもなく、「人とのよいつながり」です。つながりがあるかどうかは、心臓病やがんの予後、血糖値、肥満度にまで影響を与えます。
これは無数の科学的研究から結論づけられている真理ですが、日本では、「つながり」が地域や家族、会社などの「しがらみ」と同一視され、煩わしいと考えられがちです。
そうした「しんどい束縛」を、「心地いいつながり」に進化させていくことが、これからの不透明で不安な時代を生き抜くカギになるでしょう。
「雑談」で「弱いつながり」を上手につなげていく
「会社」「家族」「地域」のように、「すじこ」のようにべったりとした関係性でなくても、まるで「くもの巣」のように、細くても、複数のネットワークにつながっておくことで、「おひとりさま」でもたくましく生きていけるのです。これが社会学でいうところの「弱い紐帯(つながり)」です。
スタンフォード大学の社会学で高名なマーク・グラノベター教授が唱える「家族や親友、同じ職場の仲間のような『強いネットワーク(強い紐帯)』よりも、ちょっとした知り合いなどの『弱いネットワーク(弱い紐帯)』が価値ある情報伝達には重要である」という考え方です。仕事なども、そこまで仲良くない人のツテのほうが見つかりやすいんだとか。
近くのお店の常連や近所の人などとの何気ない短い会話や声掛け、趣味を通じたゆるい人間関係。そういった「弱いつながり」の中でも、自分の存在を認めてくれたり、手を差し伸べてくれたりする人がいてくれるだけで、「幸福感」はぐんと上がります。
まさに、「雑談」は「くもの糸」というわけです。上手に張り巡らせれば、人生はもっと安定し、安心感をもたらしてくれるものなのです。
「雑談力・会話力」は決して才能ではなく、誰でも学べ、あっという間に上達できるスキルです。不透明な時代を生き抜くカギとなるこの「人生最強の武器」をみなさんも手に入れてみませんか。
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