一橋大「入試流出」中国人受験生が東大を避けた訳 コロナ禍での特例措置が悪用された可能性も

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警視庁担当記者によると、22歳の王容疑者は「日本の他の大学に在籍しながら一橋大学を受験して再入学した」という。つまり仮面浪人だったようだ。

今年1月の共通テストで不正を行った女子学生も他大に通いながら再受験しており、「試験会場から動画で問題を外部の協力者に送る」「協力者が第三者に解答を依頼し、不審に思われて通報される」と共通点が多い。

仮面浪人に関するデータはないが、コロナ禍によるオンライン授業を背景に非常に増えているように思う。

大学の合格発表が集中する2月下旬から3月上旬にかけて、ツイッターで合否をツイートしたアカウントには仮面浪人を名乗る受験生が少なくなかった。

早稲田大学3年生の田中さん(仮名、22)は、オンライン授業で単位を取りながら受験勉強を継続し、2021年、2022年と東大を受験して不合格だった。今年は対面授業が増えたが、大学には週1回しか行かず、ほかの日は予備校に通って「三度目の正直」を目指している。

「入学式がなくて大学生になった実感がなく、この2年は家で受験勉強をしていたので友達もいない。今さら早稲田には戻れない」と話す。

孤独感を感じやすい留学生

コロナ前に来日し、日本での生活になじむ前に自粛生活に突入した留学生は、より挫折と孤立感を感じやすい。日本の大学院進学を目指して中国・大連市から2019年9月に来日した韓陽さん(仮名、24)は、1年~1年半日本語学校に通い、国立大学の大学院に進学する計画だったが、日常会話を習得する前にコロナ禍で日本語学校が休校したことで歯車が狂った。

飲食店の一斉休業などでアルバイトの機会もなく、2020年7月には、年間100万人以上が受験し、多くの企業が外国人採用の判断に使う日本語能力試験も中止された。

韓さんは日本語の学習を中断し、英語カリキュラムで学べる大学院の受験に切り替えた。進学はできたものの、来日3年経っても日本人の友人は1人もいない。

中国の強烈な学歴社会を反映していると同時に、日本の入試不正対策の甘さが改めて浮き彫りになった事件でもある。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
X: https://twitter.com/sanadi37
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公式サイト: https://uragami-sanae.jimdosite.com/
 

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