一橋大「入試流出」中国人受験生が東大を避けた訳 コロナ禍での特例措置が悪用された可能性も
日本の大学の多くは、年に2回行われる「日本留学試験」の成績を学部入試の合否判定に利用する。日本の大学の講義についていけるかを測る同試験は「日本語」「総合科目」「数学」「理科」から構成され、留学生版「共通テスト」という位置づけだ。
東大の文系学部は日本留学試験の「日本語」「総合科目」「数学」の成績と英語力を測るTOEFLのスコアで一次選考を行い、二次試験は小論文と面接となっている。
京都大学の経済学部と法学部は、小論文の代わりに日本人学生が二次試験で受験する「国語」を課すなど、細部に違いはあるものの、難関国立大はTOEFLと日本留学試験、志望理由書などで一次選考を行い、小論文や面接で二次選考を実施するのがおおむねスタンダードとなっている。
この形式だと、問題を外部に送って協力者が回答を送信するという不正行為は難しい。
マーク中心で合否が決まる一橋
対して一橋大学は私費外国人向け入試で日本留学試験の成績提出を求めていない。その代わりに王容疑者も受験した個別試験で「日本留学試験相当」の数学と総合科目の試験を行っている。募集要項によると、コロナ禍で日本留学試験が受けられなかった受験生に配慮した措置で、2021年度、2022年度の特例のようだ。
2020年度までは満点2000点のうち1420点は出願時に提出する外部テストの成績が使われ、入試当日の試験の配点は580点だった。しかし2021年、2022年は入試当日の試験の配点が1580点となった。
日本留学試験の総合科目、数学はいずれも複数の選択肢から正答を選ぶマーク試験なので、一橋大学が実施した「日本留学試験相当」の試験もその形式を踏襲し、マーク中心だった。マーク試験なら、イヤホンを使って解答を教えるのは難しくない。
事件を取材している警視庁担当記者によると、李容疑者は「王容疑者の実力では合格が難しいから不正に協力した」と供述しているという。
王容疑者が過去に受験した日本留学試験の成績が振るわなかったことから、そのスコアを必要とせず、不正をしにくい小論文や面接も行わず、マーク中心の学力試験で合否が決まる一橋大学に目を付けたのではないか。「コロナ禍」を考慮した受験生への配慮が悪用された可能性がある。
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