食品表示から「無添加」の表示が消えていく事情 自分で安全な食品かどうか見極める方法を解説

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こうした表示には確かに問題がありました。「無添加」との表示を見て、「添加物は使っていないんだ」と思って買って見ると、「無添加」という文字の下に小さく「合成着色料、合成保存料」などと書かれていることが珍しくありません。つまり、それらの添加物は使っていないが、ほかの添加物は使っているということであり、決して無添加ではないのです。

またインスタントラーメンやカップラーメンで、「保存料不使用」といった表示もありましたが、これらは乾燥させてあり保存が効くので、本来保存料は必要ないのです。本来必要ないのにこのように表示するのは、優れた製品のように見せかけるものです。いずれも消費者を欺いていると言えるでしょう。

こうした問題はずっとくすぶっていたのですが、これが社会的な問題になった事件があります。それはイーストフードと乳化剤の「不使用表示」の是非をめぐって、大手製パン会社の間で繰り広げられた激しいバトルです。

このバトルは新聞でも取り上げられて問題となり、消費者庁は2021年3月に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン検討会」を設置し、「無添加」や「○○不使用」などについて、議論が行われました。そして今年の3月30日付けで「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が公表されたのです。

「添加物は健康を損なうおそれがない」は本当!?

同ガイドラインでは、食品表示法の禁止事項に該当する恐れがある表示として、「何を添加していないか不明確な、単なる『無添加』の表示」や「無添加あるいは不使用を健康や安全の用語と関連付ける表示」、「無添加あるいは不使用の文字などが過度に強調されている表示」など10類型を提示しました。

注目すべきは、「無添加あるいは不使用を健康や安全の用語と関連付ける表示」です。これが禁止事項に該当する恐れがある理由として、「食品添加物は、安全性について評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限って国において使用を認めていることから、事業者が独自に健康及び安全について科学的な検証を行い、それらの用語と関連付けることは困難であり、実際のものより優良又は有利であると誤認させるおそれがある」とあります。

つまり、「優良又は有利であると誤認させるおそれがある」ため、「無添加」や「○○不使用」という表示はしてはならないということです。しかし、「人の健康を損なうおそれのない場合に限って国において使用を認めている」というのは本当なのでしょうか?

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