角田:そういう環境があると誰か動くし、それを見た周りも影響を受けるよね。「自分の判断で使って大丈夫だ」と言われても、本当に大丈夫なのか不安な人はいるから、「怖くない」ことを示してあげないといけないけど、今の話では具体的に「何万まで使っていい」と言われているから、少なくともアーリー・アダプターみたいな人はやり始めるよね。それを見て周りの人も影響を受けるだろうね。
加藤:我々ぐらいの世代だとさ、子どもの頃に「遠足のお菓子は300円まで」というのを経験してるじゃない。お金の裁量と、好きなお菓子を買っていいという判断の裁量が与えられて、まあ子どもながらに……とっても悩み、「ああでもない、こうでもない」買い物かごに何度も出し入れして試行錯誤したよね?
消費税もない時分だったけど、結局300円ぴったり使い切るのは難しくて290円くらいに落ち着いて、自分的にはすごく納得してたんだけど、いざ当日になってみると思いも寄らないお菓子を持ってきた奴がいるのを見て、「次の遠足ではあれ買おう」と誓う……みたいなサイクルを回したわけだ。
仕事でも同じように金額と範囲の裁量が与えられて、事後に上司がハンコを押すにしても基本的には通る、という経験を繰り返すことで、きっと自発的に動く練習になると思う。指示待ち族の人は、自分がどれだけのことをやっていいか、幅がわからなくて怖がってる部分もあるんじゃないかな。だから「○万円です」と幅は決められていて、そこからは自分で選択肢を生み出す、という練習があってもいいんじゃないかな。
負けをちゃんと弔い、リーグ戦で評価する
角田:指示待ち族か、究極的には失敗が怖いわけだよね。「失敗してもいいから」みたいな空気を作ればチャレンジへのモチベーションも上がるのかな。
加藤:その時にも裁量とセットにしないとよくないと思う。そうでないと、どこまで失敗していいのかわからないでしょう。
角田:なるほどね。
加藤:決まった裁量の範囲で、自分が「選択肢を生み出す」立場になることが大事なんだと思うな。ランチに行って「どのメニューも惹かれないな」みたいなことを言うくらいなら、自分で新しいメニューを作る側になってみたらいいんだよ。
「スペシャル定食は人気があるけど、作るのが大変だからあまり注文してほしくないな」とか「ランチ単品じゃ儲からないな。ドリンクセットで少しでも客単価を上げよう」みたいなことを実際に体感したり、自分の考えたメニューが客に選んでもらえるか不安だけれども俎上に乗せたり、そういう経験が「指示待ち」から脱出するには必要なんだと思う。