中国の「巨大EC商戦」に参戦する日本勢の深刻問題 残るロックダウンの余波、大幅値引きの弊害も

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哺乳瓶などを販売するベビー用品大手のピジョンは、同社の利益の約7割を中国で生み出しており、上海には製造工場を構えている。同社担当者は、「ロックダウン期間中は従業員に希望を募り、工場に泊まり込みで生産を続けたが、稼働率は高くなかった。また、1日に動かせるトラックの台数が決まっていて、思ったように出荷も進まなかった。618のセール期間中に欠品を起こす可能性がある」と不安げだ。

ロックダウンが解除された6月1日以降も、混乱は解消されたわけではない。「さまざまな企業がトラックを手配しようとして、取り合いが起きている。ある程度は手配できたが、満足できる水準ではない」(同)。

現地での在庫確保に奔走する日本勢

他方で中国に製造工場を持たず、日本から輸出している企業は、現地で確保している在庫量によって明暗が分かれる可能性がある。検疫強化の影響などもあり、物流網に遅れが生じているためだ。

中国の市場調査などを行っている中国市場戦略研究所の徐向東社長は、「中国で販売数量の多い資生堂などはともかく、売り上げ規模の小さいメーカーは厳しいだろう」と分析する。売り上げ規模の小さいメーカーは現地在庫が少ないため、欠品が生じる恐れがある。

東洋経済は日用品・化粧品メーカー大手各社に、618向けの商品の出荷状況についてヒアリングを実施。「計画をわずかに下回るものの、前年を大きく上回る売り上げ」(ファンケル)、「ロックダウンのリスク回避をするため、上海に加え、送り先を追加するとともに、早期出荷を行った。着荷後は、倉庫を新たに準備して物流拠点を分散させ、影響を最小限にできるよう対応している」(コーセー)といった回答を得た。

せっかくの商戦期に機会ロスを起こさないよう、急ピッチの対応に追われる日系メーカー各社。しかし、ロックダウンの影響が解消された先でも、今後は大型イベントでの販売戦略そのものを見直す必要が出てきそうだ。

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