政府は6月7日、「新しい資本主義」の実行計画である「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画・フォローアップ」を閣議決定した。内容はすでに報じられているように、「成長戦略重視」という印象が強い。
2021年10月26日に行われた政府主導の「新しい資本主義実現会議」の第1回では、事務方から「新しい資本主義(ステークホルダー論)をめぐる識者の議論の整理」という資料が提出され、既存の資本主義の問題点などについて議論されていた。
例えば、下記のような著名人の主張が並べられ、新自由主義や株主至上主義の問題点が指摘された。
「新しい資本主義」は着地前に流れが変わった
ところが、これらのスタート時にみられたコンセプトと比べると、今回、出来上がった実行計画は、前政権までの「成長戦略」にかなり近い着地となった印象である。
そうした結果を受けて、実現会議のメンバーでもあり、「新しい資本主義」によって「株主至上主義の是正」を訴えてきた原丈人氏は、朝日新聞のインタビュー(5月30日朝刊掲載)において、実行計画に対して「資産所得倍増の前に分配政策を」と「不満」を訴えた。
2月にBloombergが行ったインタビューでは、原氏は「(岸田首相と)よく会っている。いろいろな助言はしている」とし、「新しい資本主義実現会議」と原氏の財団を「車の両輪」に例えていたことを考慮すると、実行計画策定の段階で、流れが大きく変わったのだろう。岸田政権の「新しい資本主義」の着地点が明確でないことは、原氏のような識者のクレームからも明らかだ。
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