SNSで測定「空気感指数」に見る日本の心配な現状 直近の日本人の感情や価値観の方向性がわかる

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「混乱」も同様の変化を示していたが、4月以降は、やや落ち着いてきた。ウクライナ侵攻という事実だけではなく、日露関係の緊迫化が「緊張」を高め、「混乱」という意識は薄れてきたといえる。また「怒り」指標については、侵攻当日の翌日あたりから高まっており、その意識が継続している。侵攻当日の「落ち込み」という感情が、徐々に「怒り」へと変化していったと考えられる。

マーケティングに反映できる「空気感」指数

今回の空気感の測定方法は、6種類の感情変化を即時に把握できることがポイントだ。新しい政策に対する反応、企業のマーケティング戦略に対する評価などを即時に計測することができる。給付金などの政策が生活者を「活気」づかせるのか、「混乱」を招くのかなどを判断できる。日用品の値上げは「落ち込み」につながるのか、「疲れ」につながるのかなども把握できる。

実際に、それぞれの政策やマーケティング戦略が実行される前、発表した時点での日本人生活者の空気感を知ることで、政策実行の見直しを検討することもできるであろう。過去の類似の政策・戦略と比較することで、今回のインパクトの大きさを客観的に測ることもできる。「日本の空気感」を科学的に把握することで、政策やマーケティング戦略のPDCAサイクルを即時に回すことができるのだ。

塩崎 潤一 野村総合研究所 未来創発センター生活DX・データ研究室長

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Junichi Shiozaki

1967年生まれ。筑波大学社会工学類卒業。1990年、野村総合研究所入社。専門分野はマーケティング戦略、数理解析・数理モデル、生活者の価値観など。同社にてデータサイエンスを活用した新規事業の立ち上げに責任者として関与。主な著書に『変わりゆく日本人』、『第三の消費スタイル』など。2019年より(社)データサイエンティスト協会の理事も兼ねる。「NRIデータサイエンスラボ公式YouTubeチャンネル」で情報を発信中。

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