官製ワーキングプア解消へ「公契約条例」が広がるが、進まない国での法制化

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 野田市に続いたのが、政令指定都市である神奈川県川崎市だ。阿部孝夫市長は、「中小企業やそこで働く労働者の多い川崎市でも導入を検討すべきだと考えた」と語る。工事現場での一人親方や指定管理者への適用など、野田市より対象となる就労者を大幅に拡大している。

今後同じ神奈川県内の政令指定都市である相模原市での導入が有力とされ、横浜市も「やる気を見せている」(関係者)とされる。各地で公契約条例導入の議論は盛り上がり(図参照)、野田市への視察は引きも切らない。だが実際の制定までにはなかなか至らない。法律上の「グレーゾーン」が少なくないためだ。

たとえば最小の経費で最大の効果を挙げるとする、地方自治法に反するのではないかといった懸念である。対して野田市は「政策目的を達成するために必要最低限かつ合理性もある」と反論している。また実務面での負担増を不安視する声もあるが、野田市総務部管財課によれば、「履行確認と予算関連を合わせても1人の増員で対応できている」という。

川崎市の条例にかかわった古川景一弁護士は、「公契約条例の大きな効果は、重層下請け構造の解消による無駄の排除にある」と語る。現場の労働者の賃金を保障することで、不透明な中抜きを許さないためだ。同時に管理責任があいまいとなり、労災発生の温床とされるその仕組みにメスを入れることにつながる。

欧米諸国ではすでに公契約条例の理念は広く浸透している。「米国ではリビングウェイジ(生活賃金)条例運動が今回の連邦最低賃金の引き上げへとつながった。そもそも1930年代に制定されたデービスベーコン法により、政府が地域の賃金相場を崩してはならないという思想が根付いている」と、福井県立大学の吉村臨兵教授は語る。また同様の趣旨はILO(国際労働機関)94号条約(日本未批准)にも規定があり、フランス、イタリアなど批准国をはじめ、欧州諸国へ浸透しているという。


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