小学生誘拐殺害予告「愉快犯」で片づけられない訳 日本全国の23自治体に脅迫メールの異常事態

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ただ、「犯人が連絡先やIPアドレスをごまかしたところで、捜査に時間がかかったとしても、最終的に摘発される可能性は高い」と見るのが自然。もし複数犯だったとしても、その手口は犯罪組織による考え抜かれたものとは思いづらく、愉快犯による場当たり的な犯行に見えます。

しかし、本当に愉快犯の場当たり的な犯行だったとしても、決して軽視しないほうがいいでしょう。そもそも愉快犯とは、「人や社会を困らせ、怖がらせ、あわてふためく様子を密かに見て楽しむ行為や犯人」のこと。日ごろから、特定の人、組織、社会への不満を抱えている人がそれを解消するために行う傾向があります。

また、「おそらくつかまらないだろう」「みんなでやれば罪は軽くなるのでは」などと、いたずら感覚や悪ふざけの延長で行われやすいのも愉快犯によく見られる傾向の1つ。つまり、犯罪行為に至るまでの心理的なハードルが低く、だからこそ粗い手口の犯行を行ってしまうのでしょう。

愉快犯が実行犯につながるリスク

そんな愉快犯が、「人々を怖がらせ、困らせて、自分のストレスを解消し、そのうえで逃げ切れた」という成功体験を得てしまったら、次の犯行につながりかねません。また、愉快犯を軽視した結果、模倣犯を生み出してしまうリスクがあります。

さらに、「愉快犯に刺激を受け、便乗するような形で、誘拐の実行犯が生まれてしまう」という最悪のケースも「ない」とは言い切れないでしょう。奇しくも現在、子どもの誘拐が連鎖するドラマ『マイファミリー』(TBS系)がトップの視聴率を叩き出すなど反響を集めているだけに、誘拐という犯罪に関してはドラマの模倣犯につながってしまうリスクもあるのです。

今回のケースに限らず、子どもの誘拐に関しては「登下校が危ない」ことは間違いありません。それだけに茨城県水戸市、山梨県北杜市、静岡県掛川市などの各自治体は、警察のパトロール、教職員の見回り、保護者の迎えなどの対応策を講じていました。愉快犯ではなく、本当の誘拐犯である可能性がある以上、「万が一」をなくすために行う当然の対応です。

子どもたちは怖さを感じているでしょうし、親や地元住民などの大人たちは憤りを感じているでしょう。ただ、必要以上に怖がり、右往左往する姿を見せると、愉快犯の思うつぼ。彼らを「愉快」にさせてしまうほど、さらなる犯行のリスクが高まってしまうだけに、「ケアをしつつも、できるだけふだん通り過ごす」という姿勢が求められます。

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