「ALSでも教壇に」デジハリ学長が認識したVRの力 杉山知之学長が今、教え子たちに伝えたいこと

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思いだけで入学した人も多く、「マウス持ってください」といったら、マウスを持ち上げているような受講生もいた。しかし僕が目にしたのは奇跡みたいな話で、デザインの勉強をしたことがない人が半年、1年ですごい作品をつくる場面によく出くわした。

なぜそうした受講生が生まれるかというと、日本はメディアリッチ、コンテンツリッチな環境だからだ。子供の頃から映像でも音楽でもデザインでもレベルが高いものに囲まれていて、体に刻み込まれている。そして技術を身に付けることによって、アウトプットを出せるようになる。

世界最高峰のアニメや漫画、そして良い工業製品や工業デザインのものを見ている。また、日本は明治時代から美術や音楽を必修科目にしているが、実はそうした国は多くない。そうしたベースがあるからこそ、コンピューターの表現も、やればだいたい誰でもできる。このことは開校3年ほどで気がついた。

コンピューターができることの先読みが必要

――設立初期の1990年代後半から2000年初頭は、IT(情報技術)への期待感が高まり、ITバブルにつながっていきます。当時の雰囲気を教えてください。

僕らが起業したあとにヤフーが誕生し大躍進した。その流れで、「ITが面白い」という道ができたと思う。

しかし、僕がそのとき思ったのは、みんなコンピューターのことを知らなすぎるというか。今その瞬間の最新技術を「これだ!」と言っているが、長くやっている人にとっては、どうせ進化するからと、最新技術を過信しない。何年も正解であり続けるはずがないと。

ITバブルのとき、いろいろなビジネスプランを見て思ったのは、「この人たちはコンピューターのことがわかっていないな」と。あの頃できたIT系ベンチャーで、生き残っている会社が少ないのは予測が甘かったからではないか。最新技術を使って瞬間的に注目されても、3カ月後にはそれよりはるかにいい技術が出てくる。そんな時代だった。

『デジタル・ストリーム―未来のリ・デザイニング』(1999年刊、2022年に新装版発刊)でも書いたが、僕らみたいに徐々にコンピューターに馴染んだ人は、「コンピューターでこんな感じのことをできるようになるよね」という姿が見えている。戦略は、そういう先を見ながら立てることが大事だろう。

――コンピューターが進化していく中でわれわれが意識することはなんでしょうか。

ある程度やりたいことがあれば、今はたいていのことはコンピューターでより早く、安くつくることができる。そして「こういうことがやりたい」というのを完璧にエンジニアに伝えられればいい。

しかし、コンピューターができることがわかっていないと伝えるのが難しい。そこでデジタルハリウッドで始めたのが、G's ACADEMY(ジーズアカデミー)という起業家・エンジニア養成学校だ。

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