「ALSでも教壇に」デジハリ学長が認識したVRの力 杉山知之学長が今、教え子たちに伝えたいこと

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――大学発ベンチャー企業の数は、大学ではかなり上位になっています。

小粒なベンチャーが多いかもしれないけど、全学生数が1000人程度と考えれば起業する人の割合は非常に多い。良い技術を持ってきたものを日本の若い世代たちに受け継いでいきたい。そういうものをデジタルハリウッドで体現させていく。

杉山学長は、ALS発症後も分身ロボット「OriHime」を活用して、学内を自由に行き来している (写真:デジタルハリウッド)

――杉山学長が今後目指したいことを教えてください。

デジタルハリウッドを始めた頃からCGにこだわっていて、以前からバーチャル・リアリティーのコンテンツをつくっていた。その経験から、コンピューターの中なら拡張できる空間を無限につくれることがわかっている。心の中では、それを全世界の人に利用してもらいたいと思っている。

戦争の元になっているのは「土地の奪い合い」みたいな言葉もある。人間の数も増えているし、人間が住める場所が環境的に減っていることを考えると、いまでいうメタバースの利用は推進すべきだろう。

メタバースで何ができるか、まだよくわからないことがあるが、その普及に貢献したい。デジタルハリウッドでもバーチャルキャンパスみたいのをどう構築するか考えている。3Dの空間利用に関わることこそ、僕の最後の仕事だと思う。

(ALSという)病気が病気なので、自分で動くことができないし、積極的に関わるにはすごく時間がかかる。しかし、メタバースやバーチャルリアリティーの中では、僕自身が判断しなくても、ある程度人工知能的な僕が学生とやりとりすることも可能になる。

みんなを生きるな。自分を生きよう。

――全身をスキャンし、声も保存して、アバターを使って教壇に立つという構想を描いていると聞いています。

自分が動けなくてもアバターが自由に動いていれば、自分も動いている気になるというのは確かだ。

今、分身ロボット「OriHime」というのを使わせてもらっていて、自宅にいてもキャンパスの中を巡ることができる。テレビ電話と違って実際の僕の姿は見えないから、格好とか気にしないで出て行ける。みんなOriHimeは僕だと思って話しかけてくるから、気楽にコミュニケーションが取れる。ALSになって、OriHimeの重要性を認識した。

――10、20年後はどのようになっていくと予測していますか。

3D、CGに夢を託してきたからこそ、メタバースが人類社会で利用されている世界を夢見ている。

そもそも人間はフロンティア精神というか、常に開拓したい場所を持っている。映画『スタートレック』では、「宇宙は最後の開拓地だ」というフレーズが出てくるが、まだ超大金持ちだけが宇宙に行ける程度だ。それに対してメタバースの世界には誰でも気軽に行ける。

メタバースが面白いのは、人間が作り上げた文化や文明をその中に引き継げるという良さを持っている。未来の世界だけでなく、古代ローマの都市に行けるし、その頃の人たちにも会える。博物館に並んでいるようなものが現実にあったように再現される。さらに人工知能がうまくいけば、亡くなった人にも会える場所にもなる。新たな文化の残しかたみたいな場所になるかもしれない。

――デジタルハリウッドの卒業生たちに伝えたいことをお伺いできればと思います。

それはデジタルハリウッドの標語でもある「みんなを生きるな。自分を生きよう。」。その精神は卒業生に受け継がれているはずだ。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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